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輸入木質バイオマス原料から、環境基準を12.8倍も上回る六価クロム検出。ベトナムから第三国経由での輸入品。建設資材廃棄物等が混在か。FIT制度の課題改めて露呈(RIEF)

2020-06-26 16:03:01

bio001キャプチャ

 

 バイオマス発電の原料として日本に輸入されている東南アジアからの木質ペレットの一部に、環境基準を上回る六価クロム等の有害物質が含まれていたことがわかった。日本の大手企業が第三国を経由してベトナムから輸入したペレットで、六価クロムは環境基準の12.8倍、このほかセレンやホウ素も基準を上回っていた。関係者は一般木質以外に建設廃材等が混在している可能性を指摘している。

 

 (写真は、大規模なバイオマス発電設備。本記事とは関係ありません)

 

 日本のバイオマス発電では、大規模な設備を有するものは、輸入燃料に依存するものが多い。燃料となるバイオマスは、間伐材等由来、一般木質由来(パーム椰子殻、剪定枝等)、農産物からの液体燃料(パーム油等)、建設資材廃棄物(リサイクル木材)、廃棄物・その他(木くず、廃油、食品残さ等)などに分かれる。

 

 問題の木質ペレットは、一般木質バイオマスに該当し、昨年、輸入されたという。輸入したバイオマス発電会社がペレットの成分を第三者検査機関で分析したところ、水銀、カドミウム、鉛等は環境基準以下だったものの、六価クロム化合物は0.64mg/Lで、環境基準(0.01mg/L以下)を12.8倍上回った。セレン・同化合物は0.02mg/Lで環境基準(同0.01mg/L)の2倍、ホウ素・同化合物は0.8mg/L(同1.0mg/L)の80%増だった。

 

輸入木質ペレットの成分分析結果の一部
輸入木質ペレットの成分分析結果の一部

 

 当該のペレットはベトナムから第三国を経由して日本に輸入された。輸入事業者は、適切に管理された森林に由来するバイオマスであることを証明するFSC(森林管理協議会)の認証付きと同等と判断していたという。しかし、関係者は、「通常、認証や保証付きの木質ペレットの場合は、六価クロム等の有害物質が含まれることはあり得ない。建設資材等が混在していた可能性がある」と指摘する。

 

 資源エネルギー庁の固定価格買取制度(FIT)では原燃料の違いを踏まえて、買取価格を設定している。たとえば、間伐材由来の木質バイオマスだと、2000kW以上の設備の場合、kWh当たり32円、2000kW未満の場合は同40円、一般木質バイオマスで10000kW未満の場合は同24円、建設資材廃棄物だと13円(いずれも税別)と違いがある。https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/fit_kakaku.html

 

 このため、木質ペレット等を産出する海外のペレット製造事業者の中には、日本向けの輸出に際して、FITの買取価格が安い建設資材廃棄物を、買取価格の高い一般木質バイオマスに混在するなどのケースがあると指摘されている。

 

 関係者によると、通常、輸入バイオマスの取引では、売主が買主に対し、引き渡すバイオマス燃料がFITの対象となる一般木質バイオマスあるいは農作物由来バイオマスであることを保証するとともに、受け渡し時に、木質バイオマス証明ガイドラインやそれに代わる書類等を提供するという。

 

 先月には、ベトナムやタイからのFSC認証付きと称する輸入ペレットに認証偽装の懸念も浮上した。ベトナムからの輸入ペレットの場合、ベトナムの森林面積を元にした生産可能枠を約5.5倍も上回る「認証ペレット」として、日本と韓国に輸出されている可能性だ。https://rief-jp.org/ct4/102720?ctid=72

 

 これに対してFSC認証制度を普及する「FSCジャパン」は、「FSC認証制度上は認証林に由来しない他の原材料の使用も認められるため、認証林面積から試算された生産量と認証ペレットの輸入量の不整合が必ずしも認証偽装を示すものではない」としたうえで、FSC制度とFIT制度の不整合を認めている。https://jp.fsc.org/jp-jp/news/id/677

 

 FSC制度では、定められた基準を満たした建設資材廃棄物は「ポストコンシューマー回収原材料」という原材料分類でFSC認証林由来の木材と同等の扱いとなる。これに対して、FIT制度では建設資材廃棄物を森林に由来する木質燃料として取り扱うことはできない。こうした制度の違いを、海外の燃料事業者が知ったうえで、買取価格の安い建設資材廃棄物を一般木質バイオマスに混在させるケースが考えらえる。

 

 環境基準を上回る有害物質を含有したペレットは当然、燃料としては使用できない。今回、有害物質が見つかったペレットは除去処理をしたとみられるが、輸入業者によっては十分な検査もせずに燃料に活用している可能性もある。そうなると、バイオマス発電所の周辺地域を汚染しているリスクもある。FIT制度ではこうしたチェックは事業者任せになっている。(RIEF)

(記事は、2020年6月29日に一部修正しました)

https://www.env.go.jp/kijun/dt1.html

https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/fit_kakaku.html