HOME10.電力・エネルギー |フィリピン・エネルギー省、新規石炭火力建設停止の「モラトリアム」宣言。開発中、建設中は含めないため、2030年までの石炭火力割合は10ポイント超上昇。環境団体からは疑念も(RIEF) |

フィリピン・エネルギー省、新規石炭火力建設停止の「モラトリアム」宣言。開発中、建設中は含めないため、2030年までの石炭火力割合は10ポイント超上昇。環境団体からは疑念も(RIEF)

2020-11-09 00:03:04

philippine001キャプチャ

 

  フィリピンのエネルギー省は、新規の石炭火力発電所の建設を停止するモラトリアム実施を明らかにした。同国ではすでに発電量のほぼ半分を石炭火力に頼っており、今後、新規の建設は見送ることになる。ただ、モラトリアム対象には建設中あるいは建設許可を得ている発電所は含まれないことから、今後も新規稼働が相次ぎ、2030年までに石炭火力比率は過半を超える。このため環境程団体などはモラトラムの範囲拡大を求めている。

 

 比政府の新規石炭火力建設見送り方針は、先にシンガポールで開いた再生可能エネルギーの閣僚級会議で、エネルギー相のAlfonso Cusi氏が明らかにした。

 

 同氏は「今回の対応は、わが国のエネルギー供給を従来以上にフレキシブルにするもの。よりクリーンで、地域ニーズに合った新しいエネルギーの導入に対応できるものにシフトする」と強調した。同省はモラトリアム対象を明確にしていないが、地域環境団体等は、停止される石炭火力発電量は13.79-GW 以上になるともみている。

 

 現在、計画中あるいは建設承認を得ている火力発電は22基ある。同国では石炭火力発電による健康被害や環境汚染等に抗議する地域住民の反発で、2017年以降、新規の石炭火力発電所は建設されていない。環境団体等はこれらの22基についても建設見送りを求めているが、政府はこれらの建設促進を最優先する構えだ。

 

 比政府のモラトリアム宣言に対しては、歓迎する向きがある一方で、疑念を向ける向きも少なくない。エネルギー省の宣言の後も、同省は同国南部での2件の石炭鉱山の開発許可を発するなど、「脱石炭」とは反する政策を展開しているためだ。

 

 同国には現在、28の石炭火力発電所が稼働中で、発電に占める石炭火力の割合は41%(2019年時点)。しかし、モラトリアムの対象外ですでに建設予定の火力が22件が今後稼働すると、石炭火力比率は2030年までに、10ポイント以上増えて53%にまで上昇することになる。

 

 環境団体の「Asian People’s Movement on Debt and Development (APMDD)」のLidy Nacpil氏は「エネルギー省のモラトリアムが本当に重要かどうかは、最終的にはモラトリアムのカバー範囲で判断されるだろう。対象範囲は計画中、開発中のすべての石炭火力を含むべきだ」と指摘している。

https://www.bangkokpost.com/world/2013947/philippines-shuts-door-on-new-coal-power-proposals

https://www.climatechangenews.com/2020/10/28/philippines-declares-moratorium-new-coal-power-plants/