HOME |JFEスチール、CO2削減強化のため、2021年度中に国内全製鉄所の転炉を最新型に転換。2030年度に排出量20%削減目指す。水素還元法等の抜本策導入の見通しは示さず(各紙) |

JFEスチール、CO2削減強化のため、2021年度中に国内全製鉄所の転炉を最新型に転換。2030年度に排出量20%削減目指す。水素還元法等の抜本策導入の見通しは示さず(各紙)

2020-11-06 13:01:04

JFE001キャプチャ

 

  各紙によると、JFEスチールは温暖化対策を強化するため、2021年度までに国内全製鉄所で中核設備の転炉をエネルギー効率の高い最新型に転換するなどの対策を実施し、CO2排出量を2割以上削減するという。2030年度までに1000億円超を環境対策に投資する。ただ、欧米等の鉄鋼メーカーで取り組みが始まっている水素活用の直接還元法等には踏み込んでいない。

 

 日本経済新聞が報じた。それによると、JFEがCO2削減のために実施するのは、転炉の最新化とともに、鉄の成分調整にリサイクル原料の鉄スクラップを多く使用するなどの改善策。触媒を使った短時間で鉄を溶かす技術も実用化するという。これらの対策によって、石炭を使用して製造する鉄鉱石由来の鉄の割合を減らし、CO2排出量を全体で2割超、抑制できるとしている。

 

 また国内最大手の日本製鉄も20年度内に初のCO2削減計画を示し、鉄スクラップだけを原料に使う電炉を海外で増やす方針としている。電炉は高炉に比べCO2排出量が4分の1に削減できる。

 

 ただ、欧州大手のアルセノール・ミタルは、水素還元法の導入等によって、2050年にはCO2排出量ゼロの「グリーン・スティール」への転換を目指している。日本でも神戸製鋼傘下の米子会社ミドレックス社が、水素活用の直接還元製鉄法(DRI)の技術をアルセノール・ミタルのプロジェクトに提供するなどの取り組みを進めている。だが、今回のJFE、日鉄とも、現行技術の積み上げ改革にとどまっている。https://rief-jp.org/ct4/104097

 

 アルセノール・ミタルの取り組みと、日本の鉄鋼メーカーの取り組みの差は、背景にある政府規制の違いが大きい。EUは2050年のCO2排出量ネットゼロを法的目標として設定を目指しており、鉄鋼所の高炉等にはすでに段階的に排出規制がかけられている。これに対して、日本では、菅首相が「2050年カーボンニュートラル」宣言をしたものの、法的拘束力のある規制は現在も導入されておらず、鉄鋼メーカーの自主的な削減に任せている。

 

 水素還元法等の技術開発の進展も、国内市場での実証化がなされない状態がこれからも続くようだと、早期に導入を目指す欧州や中国に、いずれ追い抜かれてしまう可能性がある。現状の設備維持を前提とした改良方式の日本企業のアプローチにとどまる限りは、首相が掲げる「実質ゼロ」の目標達成も遠のきかねない。「2割の削減」は「一歩」でしかない。

https://r.nikkei.com/article/DGXMZO65900470V01C20A1MM8000?type=my#AAAUAgAAMA

https://www.jfe-steel.co.jp/