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海運業界に広がる原発事故の波紋。福島沖・首都圏近海の航行忌避続出(Reuters)

2011-04-29 18:06:57

東京電力福島第1原子力発電所の事故による日本の信用力低下が様々な形で露呈している。ロシアのサハリンから日本に輸入されている液化天然ガス(LNG)タンカーの大部分が福島沖の放射能汚染を懸念してロシア側の指示で日本海経由で東京湾に運ばれている。日本海を南下し九州をぐるり一回りし鹿児島県の大隅半島の先を回っているという。

これはロシア側が運航しているLNGタンカーの例だが、日本の海運大手が運航する船も船員の大部分は外国人が運航の担い手であるため、原発事故のさらなる悪化などを契機に首都圏近海の航行を嫌がるリスクが予想される。

海運大手では、通常LNGタンカー1隻あたりの船員は30人を通常日本人6人、外国人24人の体制で運航しているが、外国人が東京湾への入港を嫌がる場合は、大阪湾に一度入港し、外国人の代わりに日本人が乗り込む計画を立てている。

ただ、プラザ合意以降の円高で海運業界は船員の外国人採用を一貫して進めてきた結果、日本人船員の数は少なく、コンテナ船などの外国人船員が東京湾入港を嫌がる場合は、西日本の港で積み荷を降ろし、すべてトラック輸送せざるを得ないとの見方も出ているようだ。

幸い現時点で外国人船員の間でこのようなパニック的な日本忌避の動きは出ていない。しかし、一部資源メジャーが日本向け輸送船については放射船検査費用を荷主負担と決めたとされている。ガソリンなど石油製品の輸入船では、日本向け運賃に「ジャパンプレミアム」がついているという。

福島原発事故の進展が一進一退の状況のなかで、透明性の高い情報を常に発信し続けることが海運業界への国際的な安心感醸成に不可欠ではないだろうか。