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福島第1原発:林業、存続の危機 土壌改良困難、山荒廃も(毎日)

2011-05-30 18:32:44

警戒区域や計画的避難区域内にある森林組合


東京電力福島第1原発事故で、警戒区域や計画的避難区域内の森林を管轄する森林組合が存続の危機に立たされている。山林は土壌改良が難しく、放射性物質の汚染による作業休止が長期化する恐れがあるからだ。休業が長期化した場合、山が荒れて土砂崩れが多発するなど、防災上の問題を引き起こす危険性もある。5月末で休業する福島県の飯舘村森林組合の幹部は「作業員が離職すれば、休業明けに林業に戻るかも分からず、事業再開も難しい」と苦境を訴えている。

 福島県や県森林組合連合会によると、両区域に指定された11市町村には約13万8000ヘクタールの森林が広がり、多くは五つの森林組合が管理する。放射線の影響を考慮し、区域内の山林での屋外作業は行っていない。

 このうち飯舘村で山林約7200ヘクタールを管理する飯舘村森林組合は、4月22日に村全体が計画的避難区域となり、国から屋外作業を控えるよう指示されたことから、事業継続は困難と判断。近く、職員11人と森林作業員約15人の大半を休職させて休業に入る。相良弘組合長は「間伐などの作業ができない状況が1年以上続けば下草が伸び、植林したばかりの若木が日光不足で弱るなどして山が荒れ、木々が順調に育たない」と指摘する。

 さらに、放射性物質による深刻な土壌汚染を懸念し、「農地と異なり、土壌改良は難しいだろう。避難区域が解除されても、山林は放射線量が高くて作業できないかもしれない」。作業員の中には林業を辞める人もいるといい、「事業を再開しても、避難先で新たな職を得た人が林業に就くか分からない。人員確保が難しくなり、山の管理が十分にできなくなるのでは」と危惧する。

 双葉地方森林組合も管理する森林約3万1000ヘクタールの多くが原発から30キロ圏内にある。組合事務所は富岡町から約40キロ離れた田村市に移転し、作業員約80人も県内外に散り散りに避難した。秋元公夫組合長は「作業が再開すれば戻りたいという作業員もいる。仕事は大幅に減るが、なんとか組合を維持したい」と話す。

 一方、田村市内の森林の一部が屋内退避区域から、屋外作業が可能な緊急時避難準備区域に変わり、25日から作業を再開したふくしま中央森林組合の職員や作業員からは「作業中に屋内に緊急避難するのは難しい」との不安の声が上がっているという。作業は主にドアや窓を閉めた林業用の重機に乗って行うものに限っており、今後は現場責任者に放射線量の測定器を持たせて安全確認する方針だ。

 県森林組合連合会は県内の他の組合の仕事を回して5組合を支える方針。林野庁は山林の汚染状況を調査する予定だが、具体的な除染対策は見通しが立たず、「当面は東京電力の賠償金や国の支援を活用して事業継続の努力をしてほしい」としている。【桐野耕一】