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IAEA閣僚会議に対する政府報告書概要(骨子) (各紙)

2011-06-07 20:16:12

政府の原子力災害対策本部は7日夕、20日から開かれる国際原子力機関(IAEA)閣僚会議に提出する東京電力福島第1原子力発電所事故に関する報告書をまとめた。主なポイントは以下の通り。







▼はじめに




 我が国はこの事故が世界の原子力発電の安全性に懸念をもたらす結果となったことを重く受け止め反省している。世界の人々に放射性物質の放出について不安を与える結果になったことを心からおわびする。




▼各号機等の状況




 1号機の海水注水を巡っては政府と東京電力本店との間で、連絡・指揮系統の混乱が見られたが、福島第1原子力発電所の所長の判断で海水注水は継続された。




▼事故発生後の緊急時対応




 事故直後の避難や屋内退避は、周辺住民をはじめ、地方自治体、警察等の関係者の連携した協力により迅速に行われた。




▼放射線被曝(ひばく)の状況




 内部被曝も含めた被曝線量が250ミリシーベルトを超える者が一定数出る可能性がある。




▼事故に関するコミュニケーション




 国際原子力事象評価尺度(INES)の暫定評価は迅速かつ的確に対応することが必要であった。




▼現在までに得られた事故の教訓




《シビアアクシデント防止策の強化》




・地震・津波への対策の強化




・電源の確保




・原子炉及び格納容器の確実な冷却機能の確保




・使用済み核燃料プールの確実な冷却機能の確保




・アクシデントマネジメント(AM)対策の徹底:今回の事故の状況を見ると、電源や原子炉冷却機能の確保などの様々な対応においてその役割を果たすことができず、AM対策は不十分であった。AMに係る指針については1992年に策定されて以来、見直しがなされることなく、充実強化が図られてこなかった。このため、AM対策については、事業者による自主保安をいう取り組みを改め、法規制上の要求にする。




・複数炉立地における課題への対応




・原子力発電施設の配置等の基本設計上の考慮:今回は使用済み燃料プールが原子炉建屋の高い位置にあったことから事故対応に困難が生じた。原子炉建屋の汚染水がタービン建屋に及び、建屋間の汚染水の拡大を防ぐことができなかった。




・重要機器施設の水密性の確保:非常用ディーゼル発電機、配電盤等の多くの重要機器施設が津波で冠水し、電源の供給や冷却系の確保に支障をきたした。




《シビアアクシデントへの対応策の強化》




・水素爆発防止対策の強化:1号機における最初の爆発から有効な手だてをとることができないまま、連続した爆発が発生する事態となり、今回の事故をより重大なものにした。このため、発生した水素を的確に逃すか減じるため、水素を外に逃すための設備の整備等の水素爆発防止対策を強化する。




・格納容器ベントシステムの強化




・事故時の放射線被曝の管理体制の強化




・シビアアクシデント対応の訓練の強化




・原子炉及び格納容器などの計装系の強化




・緊急対応用資機材の集中管理とレスキュー部隊の整備




《原子力災害への対応の強化》




・大規模な自然災害と原子力事故との複合自体への対応




・環境モニタリングの強化:緊急時においては、国が責任を持って環境モニタリングを確実にかつ計画的に実施できる体制を構築する




・中央と現地の関係機関等の役割の明確化等:原子力災害対策本部と原子力災害現地対策本部との関係、政府と東京電力との関係、東京電力本店と現場の原子力発電所との関係、政府内部の役割分担などにおいて、責任と権限の体制が不明確な面があった。特に事故当初においては、政府と東京電力との間の意思疎通が十分ではなかった。




・事故に関するコミュニケーションの強化:国民への情報公表という点については、現在までは正確な事実を中心に公表しており、リスクの見通しまでは十分には示してこなかったため、かえって今後の見通しに不安を持たれる面もあった。




・各国からの支援等への対応や国際社会への情報提供の強化:低レベル汚染水の海水への放出について近隣国・地域への事前の連絡がなされなかったことなど、国際社会への情報提供は十分でなかった。




・放射性物質放出の影響の的確な把握・予測:緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)は、事故時の放出源情報が得られなかったため、本来の活用方法である放出源情報に基づく放射能影響予測を行うことができなかった。




・原子力災害時の広域避難や放射線防護基準の明確化




《安全確保の基盤の強化》




・安全規制行政体制の強化:原子力安全・保安院を経済産業省から独立させ、原子力安全委員会や各省も含めて原子力安全規制行政や環境モニタリングの実施対せの見直しの検討に着手する。




・法体系や基準・指針類の整備・強化




・原子力安全や原子力防災に係る人材の確保




・安全系の独立と多様性の確保




・リスク管理における確率論的安全評価手法(PSA)の効果的利用




《安全文化の徹底》




・安全文化の徹底




▼むすび




 我が国は事故の収束の状況を見つつ、「原子力安全基盤の研究強化計画」を推進していくこととしている。同時に、原子力発電の安全確保を含めた現実のコストを明らかにする中で、原子力発電のあり方についても国民的な議論を行っていく必要がある。