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ロイター個人投資家調査:東電賠償スキーム「評価できない」6割 (Reuters)

2011-06-17 14:25:44

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[東京 17日 ロイター] 個人投資家の投資マインドが再び悪化している。ロイターが17日にまとめた個人投資家調査では、日本株への投資スタンスを示すロイター個人投資家DI(「強気」の割合から「弱気」の割合を引いて算出)は、政治不安や復興の遅れを背景にマイナス52(前月マイナス38)に低下した。

 東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)福島第1原発事故の損害賠償スキームについては「評価できない」が全体の62.7%を占め、最終的な資金負担は本来ならば東電や株主が負うべきとの意見が多数を占めた。独占体制による歪みが懸念される中で、日本における電力自由化には78.8%が「賛成」とのスタンスを示した。

 調査は、ロイター.CO.JPの個人投資家向けメールマガジン購読者である全国の個人投資家を対象に実施し、584人(男性93%、女性7%)が回答した。年齢層は20代が2%、30代が8%、40代が23%、50代が25%、60代が29%、70代以上が13%。調査期間は6月6日─9日。調査期間中の日経平均は9400円台前半を中心に推移した。

 <東電損害賠償スキーム「評価できない」が62.7%、あいまいな責任>

 政府は6月14日、福島原発事故の損害賠償支援を行う「原子力損害賠償支援機構法案」を閣議決定した。同法案は5月13日に決定した賠償スキームに沿った内容で、賠償支払いに対応する支援組織として、東電を含む電力会社が負担金を拠出して新たな機構を設立し、政府は国債の交付や政府保証付与などを通じて機構を援助する形をとるが、現時点では法案成立には至っていない。

 この損害賠償スキームの評価を聞いたところ、「評価できない」が62.7%と最も多く、次いで「わからない」が22.9%、「評価できる」が14.4%だった。今回のスキームは、東電の株主や社債権者を事実上免責する内容とされるが、賠償責任を最終的に誰が負うべきかとの質問に対しては、「東京電力」との回答が最も多く、次いで「株主」が続いた。

 スキームを「評価できない」とした回答者には、賠償責任のあいまいさへの批判が目立つ。「東電と国の責任のなすり付け合いによるスキームは評価できない」(30代男性)、「結局は国民負担で責任者不在」(40代男性)、「なぜ他の電力会社が間接的に賠償金を負担するのか分からない」(40代男性)など、不明確なルールが批判の理由になっている。「東電の内部リストラが不十分。JAL方式で行うべき」(60代男性)、「国策で推進した原発であり、設計基準、認可による政府責任を放棄している」(50代男性)として、東電と国それぞれの責任を深く追及するよう求める声も多い。

 「わからない」との回答をみると、「損害賠償期間が長期にわたるため現段階で評価は不明」(30代女性)、「政権が交代したら中身も変わりそう」(40代男性)との声が出ていた。「評価できる」との回答をみると「確実に補償することを最優先」(40代男性)として、スキームの形式よりも被災者救済を確実にすべきとの見方があった。

<電力自由化に「賛成」78.8%、独占体制で歪み>

 英国など諸外国で電力の自由化が進む一方で、日本でも本格的な電力自由化を進めるべきかどうか聞いたところ、「賛成」が78.8%、「反対」が9.9%、「どちらでもない」が11.3%となった。自由化に「賛成」との回答をみると、「独占体制が原発事故を招いたうえ、高い電力価格が日本の産業競争力を阻害している」(30代男性)、「競争原理の中で革新的な代替エネルギーが発明される可能性がある」(40代男性)として、競争原理の導入が不可欠との指摘が出ていた。「反対」との回答をみると「産業、国力の基盤であることを考慮すれば無理」(60代男性)として、エネルギーは自由化になじまないとの指摘や、米カリフォルニア州での電力自由化に伴う電力危機や2001年のエンロン破たんなどを引き合いに「カリフォルニアの二の舞はご免」(30代女性)との声もある。

 <個人投資家DIは再び悪化>  

 日本株への投資スタンスを示すロイター個人投資家DIはマイナス52となり、復興期待で若干持ち直した前月(マイナス38)から再び悪化した。リーマン・ショック後につけた過去最低(マイナス74、2009年3月)には至らないものの、投資マインドは低迷している。

 業種別にみると、前月から改善したセクターは自動車のみとなった。サプライチェーンの早期復旧見通しが広がったことがサポート要因。一方で、震災後に急速に高まった復興需要期待がはく落した建設・不動産が弱気に転じたほか、IT・ハイテクや金融・保険も悪化した。

 「弱気」の回答をみると「大震災から3カ月経つにも関わらず、政治家は被災地を無視した権力争いをしており、経済に良いはずがない」(50代女性)、「政治混乱による復興の遅れ」(70代以上男性)として、政治的な混迷が多くの投資家に嫌気されている。外需主導型の景気回復が頼みの日本経済にとって、さえない海外景気動向も重しとなっており「米国のQE2後が見えない限り自律反発はない」(50代男性)、「新興国の経済にかげりが見えはじめた」(20代男性)との声があるほか、「円高の行方、原発の鎮静化が読めない」(60代男性)として懸念要因は少なくない。

 「強気」の回答をみると、「予想よりも早くサプライチェーンの復旧が進んでいる」(40代男性)、「トヨタ自動車(7203.T: 株価, ニュース, レポート)の生産正常化が6月に90%と前倒しで進む見通しで、日本の基幹産業である自動車業の回復が期待できる」(20代男性)として、早期復旧を先取りする声が出ていた。海外勢による日本株買いの勢いが鈍る中「QE2終了で株価が下落しても、最終的には震災復興により上昇する」(30代男性)として、復興需要への期待感も根強い。

 「現在、投資したい/投資資金を増やしたい株」(複数回答)では、成長株や景気敏感株の人気が低下した。「現在、投資しようとしている/投資金額を増やそうとしている金融商品」(複数回答)では、預貯金や外国株式の人気が高まる一方で、国内株式の人気は低下した。株式投信は前月から変わらずだったが、内訳をみると日本が低下する一方で、ブラジルや中国の人気が高まった。

 「現在、外為証拠金取引(FX)をしているか、もしくは将来やりたいと思っているか」との質問には、29%が「はい」、71%が「いいえ」と回答。「はい」との回答は前回調査から1ポイント上昇した。

 *ロイター.CO.JPの個人投資家向けメールマガジン購読者は35歳以上の男性が多く、平均年収は約800万円。半数以上が1000万円以上の金融資産を保有している。

 (ロイターニュース 寺脇麻理、富沢綾衣、企画協力:下郡美紀、新倉由久、程近文)http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-21757020110617?pageNumber=3&virtualBrandChannel=0