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「水産業復興特区」で対立先鋭化 宮城・県漁協と県幹部(河北新報)

2011-06-23 13:23:04

村井嘉浩宮城県知事肝いりの「水産業復興特区」構想が22日、政府の復興構想会議の1次提言に盛り込まれることになった。県は特区創設を機に民間活力を導入し、水産業の復興を急ぐ方針。一方、構想撤回を求める宮城県漁協は反発のボルテージを上げた。先鋭化する両者の対立から取り残された現場では、実質的な支援策を求める声が上がった。
 「被災者であるわれわれの意見を聴かずに結論を出した。到底受け入れられない。全国の漁業者とともに徹底的に戦う」
 21日に特区構想の撤回を求める1万3949人の署名簿を提出したばかりの県漁協の船渡隆平専務は、戦闘モードを全開にした。

 企業参入の受け皿となる漁業会社は「地元漁業者が主体となる」との県の説明について、船渡専務は「議決権を漁業者側が握ったとしても、資本力のある企業に経営の主導権は移る」と警戒感をあらわにした。

 1次提言には明記されるものの、特区導入に向けた不確定要素は多い。
 「次は省庁段階での検討に移る。水産庁はどう判断するのか」。県幹部は、制度設計の段階で、特区に慎重な水産庁による巻き返しを警戒した。
 水産庁は、現行の漁業法を弾力的に運用し、企業参入を図る意向とされる。全国漁業協同組合連合会(全漁連)と歩調を合わせ、特区構想の柱である漁業権付与の優先順位撤廃に待ったをかけることも予想される。
 特区構想撤回を求める県漁協の請願を継続審査とした県議会産業経済委員長の中山耕一県議は「養殖業者からいろいろな意見を聴く方針や、県と県漁協の話し合いの推移を見守る考えに変わりはない」と述べた。

 一方、南三陸町歌津の漁業三浦恒志さん(46)は「特区の議論は現場とかけ離れたところでやっている。養殖業支援の方針を早く決めてもらわないと来年の収穫も難しくなる」と不安を訴えた。