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仙台式がれき処理軌道に 地元業者に優先発注推進(河北新報)

2011-06-27 17:29:23

震災廃棄物の分別処理が進む蒲生搬入場=14日、仙台市宮城野区

 東日本大震災で大量に生じた震災廃棄物。仙台市が「復興の第一関門」と位置付ける自己完結型の処理が、軌道に乗り始めた。「環境先進都市」を掲げる市は、年間ごみ排出量の3倍に当たる103万トンのがれきを10種類以上に分別し、リサイクル率50%以上を目指す。一連の作業は地元業者に優先発注し、震災で冷え込んだ地域経済の下支えにもなっている。

<3ヵ所に整備>
 津波に襲われた宮城野区の蒲生搬入場。がれきを満載したダンプカーが絶え間なく出入りし、重機のエンジン音がうなりを上げる。場内には冷蔵庫やテレビ、木くずなどが整然と積まれ、幾つもの山ができている。



 「がれきを早く処理できれば、復興のスピードも上がる。分別をいかに効率化できるかが勝負」。管理を請け負うジャパンクリーン(青葉区)の杉沢養康社長は「分別処理のモデルをここで見せたい」と意気込む。
 市は蒲生と若林区の荒浜、井土の3カ所に計約100ヘクタールの搬入場(仮置き場)を整備した。もともとは海岸公園や防災林。津波で被災し、周辺の居住者もほぼ避難したため、海辺に広大な平地を確保できた。
 東部沿岸地域を中心に9000棟と見込まれる損壊家屋の解体撤去は、6月中旬から本格化した。重機と運搬車、作業員によるチームを編成。現場でがれきを(1)可燃物(2)不燃物(3)資源物―に大まかに分け、搬入場での分別の効率化につなげる。
 徹底した分別が奏功し、既に鉄くずはリサイクルのルートに乗った。リサイクルに回せない可燃物は破砕するなどして、10月に稼働する仮設の焼却炉で焼却処分する。
 3カ所にはこれまで約20万トンが運び込まれ、進行率は約19%。7月には農地のがれき収集に着手し、総勢約200チームが活動する。本年度内に搬入を終え、2013年度末までに処理を終える計画で、萱場道夫環境局長は「作業は当初の予定より前倒しで進んでいる」と自信を見せる。

<業界「使命感」>
 市はこうした業務の割り振りを仙台建設業協会(81社加盟)と宮城県解体工事業協同組合(44社)に委託。仙台建設業協会の深松努副会長は「災害ですぐに動けるのは地元の組織。年度末の災害で資金繰りが苦しい中、誇りと使命感で取り組んでいる」と自負する。
 両団体は震災直後から人命救助や道路のがれき撤去、遺体捜索に携わってきた。県解体工事業協同組合の佐藤正之理事長は「一番先にやらなければならない最前線の仕事だった。業界の存在意義を考えさせられた」と言う。
 がれき以外にも市は被災自動車9700台、ヘドロや土砂といった津波堆積物130万トンなどを処理する必要があり、総費用は1000億円にも達する。土砂やコンクリートくず、アスファルトくずについては震災復興ビジョンに掲げた東部沿岸地域の防災施設や県道、宅地のかさ上げに活用できないか検討する。
 市が処理主体となって極力、リサイクルを進め、地元業者も活用する「仙台方式」。県による2次仮置き場の選定が遅れ、対応に苦慮する被災自治体の注目も集めている。業界関係者からは「宮城、東北をけん引する百万都市として、がれき処理の見通しがつけば他自治体の処理を引き受けるべきだ」との声も出ている。

http://www.kahoku.co.jp/news/2011/06/20110627t11009.htm

震災廃棄物の分別処理が進む蒲生搬入場=14日、仙台市宮城野区