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タイの世銀支援によるパクムンダム 建設から24年目 今も漁業被害 水不足で発電も半分以下(メコン・ウォッチ)

2013-05-27 12:36:02

PakMun Dam
PakMun Dam
PakMun Dam


世界銀行の支援で1991年に建設されたパクムンダム。住民が異議を唱え始めてから24年の歳月が経ちましたが、未だに問題は山積しています。問題の根源は問題の多いこのダムを建設することでしたが、その後の歴代政権が学問的な調査を無視し、住民との合意を守らないことで更に傷を広げています。

過去、政府の委託を含むいくつもの調査研究がこのダムの発電効率の悪さ、計画前に被害を過少に見積もりすぎたこと、ダムの水門を開放して自然環境を回復することが住民の生計回復に一番効果的、と指摘しています。しかしそれはいつも実現しません。

 

パクムンダムの問題については、こちらをご覧ください。
http://www.mekongwatch.org/report/thailand/pakmun.html
メコン・ウォッチが監視を始めてからも、13年が経っています。

今年の5月6日、人々はタイ政府が貧困対策で運行している無料列車に乗って、東北タイのウボンラチャタニ県からバンコクにやってきました。下記に、バンコクに向かう際のプレスリリースを翻訳しました(原文タイ語)。歴代首相の名を連ねているこの批判に、世界銀行の名も、一行くわえられるべきではないでしょうか。

先日、ラオス出張の帰りのトランジットの合間、ほんの数十分ですがバンコクの首相府前に寄ってきました。夜おそくなってもアスファルトの地面は熱を持ち体感の気温は下がらない中、その道路の上にゴザを敷いた寝床で皆さんは休んでいました。

現地の様子は、公平な社会のための国民行動(P-Move)のFacebookで公開されています(情報はタイ語)。
https://www.facebook.com/profile.php?id=100003396707034

 

貧民会議―パクムンダム影響住民プレスリリース(特別版)
13人の首相、16の政府、45の閣議決定
「勇気のない政府が導く不公平な問題解決」


パクムンダムが建設され運転を開始してから今までの24年間、パクムン(ムン川河口)に暮らす人々に対し、政府による公平な問題解決は一度も実現したことはない。私たちは権力を持っている人に対しずっと、正義を実施するように訴えているがダムに伴う苦しみは日々増している。

私たち、パクムンで魚をとっていた者たちはずっと政府を信じてきた。そして、ずっとあなた方に騙され続けてきた。何人もの指導者が真剣さを装って約束をしたが、パクムンの人は最後には放置されてしまう。

1.チャーチャーイ・チュンハワン首相、スチンダー・クラープラユーン首相。あなた達はパクムンダムを建設することで、私たちに不幸を押し付けた。

2.チュワン・リークパイ首相。あなたは私たちに、ムン川の魚が昔のように豊かになると約束し、ダムに魚道と稚魚育成の施設を作らせた。しかし、これらの建造物は今や失敗の記念碑と化している。

3.チャワリット・ヨンチャイユット首相は、私たち魚をとって暮らしてきた人の損害を穴埋めするため、世帯当たり15ライ(1ライ=0.16ヘクタール)を支給すると約束した。だが、あなたも最後には私たちを騙した。

4.チュワン・リークパイ首相。あなたは中立委員会を作った。その委員会は真偽をはかった結果、ダムの水門を開放し、生態系とコミュニティの暮らしを回復すべきと提言した。しかし、最後にあなたは、自分で作った委員会の提言を実行しなかった。

5.タクシン・チナワット首相。あなたは試験的なダムの水門開放を行い、ムン川の魚について真実を明らかにした。そして、地元ウボンラチャタニ大学に調査を委託した。だが、同大学が調査をした結果、パクムンダムの水門を開放するという方法で生態系とコミュニティの暮らしを再生させ、ダムの問題を解決するよう提言した際、最後にはこの提言を実施しなかった。そして手のひらを反すように水門開放4ヶ月、閉鎖8か月とする閣議決定を行った。この決定は、裏付けとなる学問的根拠を持っていない。

6.スラユット・チュラーノン首相。あなたは洪水のときには水門を開けるようにタイ発電公社に命じることで、魚をとる人に更なる苦しみをもたらした。村人は、魚がメコン河から回遊しムン川に遡上してくる時期に水門を開けて欲しいと望んでいるのに。

7.アピシット・ウェーチャーシワ首相。あなたは委員会を作り、パクムンダムの受益者と被害者から意見を聞いた。更に、学識経験者に今まで行われた7件の調査結果をまとめるように委託した。そしてあなたは試験的に5年間水門を開放し、今までの被害緩和のため世帯あたり31万バーツを支払うと私たちと合意したが、最後にはタイ国調査ファンド(TRF)に新たな調査をするように指示した。これは、元の木阿弥だ。

8.インラック・チナワット首相はパクムンダム問題解決のため、委員会と小委員会を設置した。2013年1月25日、副委員会は次の3点の決議を出した。

   (1)2011年5月3日の閣議決定とパクムンダム問題解決に関する全ての閣議決定をキャンセルすることに賛成する。
   (2)パクムンダム問題解決に関する全ての委員会、小委員会と作業部会を解散することに賛成する。
   (3)パクムンダム建設から影響を受けた住民の問題を解決するための新しい執行委員会を作ることに賛成する。

2013年2月22日、このチャルーム・ユーバムルン副首相を委員長とする委員会は、2013年1月25日の合意を了解し、至急閣議に上げるよう進言した。しかし、今になっても何も実行されていない。

私たちムン川河口で魚をとっている者は、真実、そして長く続く被害を元にして政府が問題解決のために正しく公平な決断をしてくれることを望んでいる。しかし、今まで具体的な対策はとられたことはない。

24年以上で、13人の首相と16の政府のもと、45回の閣議決定が行われた。しかし、パクムンダムの問題とそれによる苦しみは、政府から正当な扱いを受けていない。私たち、貧民会議パクムンダム影響住民は状況を座視せず、タイ王国憲法に保障された権利に基づき、2013年5月6日からパクムンダムの問題に具体的な解決がとられるまで、首相府前での平和的な集会を行うことを宣言する。

 

国民の力を信じて

貧民会議パクムンダム影響住民
公平な社会のための国民行動(P-Move)
於ウボンラチャタニ(仮)県庁前
2013年5月2日

 

(注:住民グループは貧民会議と公平な社会のための国民行動、二つのネットワークに所属して運動を展開している)

(文責/翻訳 木口由香 メコン・ウォッチ)

http://mekongwatch.org/resource/news/20130520_01.html