HOME9.中国&アジア |韓国、揺らぐ原発の信頼感 電力不足の可能性、弱冷房など国民への節電義務化 7月から実施(Business Journal) |

韓国、揺らぐ原発の信頼感 電力不足の可能性、弱冷房など国民への節電義務化 7月から実施(Business Journal)

2013-06-25 21:23:21

事故が相次ぐ韓国の原発
事故が相次ぐ韓国の原発
事故が相次ぐ韓国の原発


韓国で原子力発電所の運転停止による電力不足の可能性が生じ、政府が節電に乗り出した。電力消費が増加する夏場に向けて緊張が高まる一方、電力危機を招いた原発に対する信頼が揺らいでいる。現地英字紙コリア・タイムズなどが報じた。

 同国では今年5月下旬、原発の安全装置に使用する部品の中に、性能試験結果について偽造した書類があることが発覚。韓国原子力安全委員会は、この部品を使用して稼働中だった南東部・新月城(シンウォルソン)原発1号機と南部・新古里(シンコリ)原発2号機の運転停止を命じた。

 整備などのために運転を停止していた8基に加えて2基が運転停止となったことで、産業通商資源部は今夏の電力消費がピークに達すると予想される8月第2週の電力供給見通しを8000万キロワットから、7700万キロワットに引き下げた。同時期の需要見通しは7900万キロワットのため、需給予想は100万キロワットの余剰確保から一転、200万キロワットの不足となる見通しとなった。

 これを受けて韓国政府は対応を協議。6月初旬、公共機関に対して冷房の設定温度を28度以上とし、電力消費のピーク時にあたる午後2~5時の間は屋内灯の利用を半分にすることを義務付けるなどとした節電強化策をまとめ、7月から実施すると発表した。

 この節電強化策の中で、政府は商業施設にも百貨店など大型店舗で冷房の設定温度を26度以上とするよう求めたほか、企業の工場でも15%の節電を義務付けるなどしており、民間部門にも協力を求めている。

 産業通商資源部の幹部は厳しい内容の節電強化策について、「短期で発電量を増やす手段はなく、需要抑制以外に電力危機を回避する方法がない」と述べ、国民に節電への理解と協力を呼びかけた。同部によると、書類が偽造された部品の交換作業を終え、2基が再稼働するまでには3~6カ月を要する見通しだ。問題の2基以外で停止中の原発については、整備などが終わり次第稼働させる。

 しかし、同国では昨年も偽造部品の使用が発覚したばかり。不正の恒常化の可能性が指摘されるなど、原発の運転管理会社、韓国水力原子力への不信感が高まりつつある。

 また、韓国の原子力安全協会は1978~2013年4月までの原発故障件数672件のうち、人的エラーが原因となったケースが18.3%あったとし、信頼回復には原子力行政の抜本的な改革が必要だと提言した。

 節電強化策が功を奏して夏の電力危機を回避できたとしても、同国内で吹き始めた原発への逆風は簡単に静まりそうもない。原発輸出にも注力したい政府にとって、尾を引く問題となりそうだ。(ソウル支局)

 

http://biz-journal.jp/sankeibiz/?page=fbi20130625500