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セシウム汚染:汚泥が満杯、自治体ピンチ 下水処理場など(毎日)

2011-08-13 19:21:44

放射能で汚染された汚泥焼却灰で満杯になった下水処理場の地下倉庫=東京都立川市の錦町下水処理場で、池田知広撮影
放射能で汚染された汚泥焼却灰で満杯になった下水処理場の地下倉庫=東京都立川市の錦町下水処理場で、池田知広撮影


各地の浄水場や下水処理場の汚泥などから放射性セシウムが検出されている問題で、処分できずに行き場を失った汚泥で倉庫が満杯になり、保管用の設備を新設せざるを得ない事態に陥る自治体が出始めた。セメント原料に再利用できないレベルまで汚染された汚泥が多く、埋め立てを引き受ける処分場も簡単には見つからないためだ。国も有効な対策は示せず、自治体の担当者からは悲鳴が上がっている。

神奈川県が管理する四つの下水処理場では先月末、汚泥焼却灰が計約1800トンに達して倉庫が埋まり、保管用テントを各処理場の敷地内に建てることを決めた。従来はセメント業者に引き取ってもらっていたが、原子炉等規制法で「放射性物質として扱う必要がない」とされる基準の1キロ当たり100ベクレル(製品段階)を超える汚泥が発生し、埋め立てしか道はなくなった。

 

だが、受け入れる処分場はない。同県の場合、焼却灰から検出された放射性物質は最高4540ベクレルで、国が埋め立て可能とした上限の8000ベクレルを下回り、横須賀市に県営の管理型処分場もある。だが、県下水道課の横溝博之課長は「住民から理解をいただける見込みはない。どこであろうと動かすのは難しい」と話す。セメント業者が引き取ってくれる濃度に下がるまで待つしかないのが現状だ。

 

8000ベクレルを超える汚泥焼却灰も抱える東京都立川市の錦町下水処理場は地下倉庫が満杯で、放射線を防ぐ鉛のシートを挟んだ保管倉庫を今月中に新設する。服部敏之場長は「いつまで続くのか」とため息をつく。

 

従来、下水汚泥や焼却灰の約8割はセメント原料や肥料などに再利用されていた。セメントに加工する際に希釈されるため、300ベクレル以下なら受け入れる方針の業者もあるが、神奈川県の汚泥焼却灰を受け入れていたセメント会社「デイ・シイ」(川崎市)は「ユーザーのことを考えると、低め低めで考えざるを得ない」と、受け入れ段階で100ベクレルの基準を堅持している。セメント協会(東京都中央区)には「家を建てるが、放射能入りの家になんか住みたくない」などの意見が寄せられているという。

 

政府は6月に示した「当面の考え方」で、▽8000ベクレル以下は管理型処分場に埋め立て可能▽8000ベクレルを超え10万ベクレル以下は、安全性を評価して埋め立てできる▽10万ベクレルを超える場合は、コンクリート壁や覆土で放射線を遮蔽(しゃへい)できる施設で管理--とした。だが、厚生労働省と国土交通省によると、浄水場の汚泥は東北や首都圏を中心に14都県で約9万2000トン、下水処理場の汚泥や焼却灰は13都県で約2万7000トンの処分先が決まっていない。

 

国交省の「下水道における放射性物質対策に関する検討会」委員の森口祐一・東京大大学院工学系研究科教授(環境システム工学)は「放射能を帯びた廃棄物を管理しやすい形で処分するには、国か自治体連合で横断・広域的に問題に取り組むべきだ。最終処分場の周辺に放射線の影響がないよう遮蔽措置をしたうえで、国民の理解を得る必要がある」と指摘する。【池田知広、樋岡徹也】

 

http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110813k0000e040017000c.html