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復興委設立し、中小支援/会社社長・古藤野智さん 石巻市 自立再建へ知恵絞る(河北新報)

2011-08-23 15:38:59

津波に被災し閉店した「牛角」鹿妻店。古藤野さんは別の場所で店舗再開を決断し、二重ローンに挑む=16日、石巻市鹿妻南
3月11日の津波で、石巻市内で経営していた焼き肉チェーン「牛角」の二つの店が壊滅的な被害を受けた。それから5カ月余り。石巻市日和が丘の古藤野智さん(48)は、ことし中に別の場所で店を再開することにした。
 見切り発車のような気がする。だが、「とにかく走りだそう」と思った。店舗そのものは借りていたが、2店の内外装や設備一式に投じた計1億4000万円の開業資金のうち、1500万円が借金として残った。
 新規開店をすれば、二重ローンの穴に落ちる。果たして、うまくそこから抜け出せるのか。正直、今も自信はない。

 妻、1男1女の4人家族。働かなければ食べていけない現実がある。じっとしていられない性格でもある。「お父さん、いつから仕事するの」。中学2年の娘の言葉が決断を促した。

 震災で、行政支援のアンバランスを実感した。
 

家の全半壊など、被災した世帯には被災者生活再建支援制度で最大300万円の支援金が出る。義援金も配分される。

 失業すれば不十分ながらも失業手当が出る。農業被害には10アール当たり3万5000円(水田の場合)の助成がある。

 ところが、中小事業所向けのセーフティーネットを調べても、利息の軽減、支払期間の延長措置などはあるものの、「これだ」と言えるような支援制度はなかった。

 「被災地再生には雇用確保こそが最も大切。その雇用を生み出すのはまさに地域の多くの中小企業なのに、実質的に対象から抜け落ちている」。理不尽だとさえ感じた。

 印刷、みそ醸造、日本料理店など、被災した地元企業の仲間と「いしのまき被災企業『元気』復興委員会」を5月に設立した。国会議員や経済産業省、宮城県、石巻市役所を駆け回り、バックアップを要請して回ったが、いつまでも淡い期待を抱いているわけにはいかない。

 復興はスピードが重要だと考えている。仕事がないまま、大勢の若い人たちが石巻を出て行ってしまったら、取り返しがつかない。「うちの店も従業員4人は解雇せずに待ってもらっている」

 年内の開店へ向け、新たな店の場所を大街道地区に絞り込んだ。近く着工の予定。開業資金(7000万円)の大半は金融機関からの融資だ。

 「ローンを減らすためには何でもしよう」と先日、復興委員会として中小企業の再建への支援を広く呼び掛けるサイト「がんばっぺ石巻」( http://www.ganbappe.biz/ )を立ち上げた。
 

このサイトを通じ、復興委員会を構成する企業への寄付金を一般から募る。古藤野さんの店は1口1万円の寄付金のうち、5000円を焼き肉店の食事券として還元する。

 「店に来てもらって、『自分の支援で立ち直ってくれたんだな』と実感してもらえれば。もちろん、固定客になってもらえるよう頑張る」

 そんな狙いを込めた手作りの再建支援サイトに、自力復興の鍵を託す。

(長谷川武裕)

http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1070/20110823_01.htm

津波に被災し閉店した「牛角」鹿妻店。古藤野さんは別の場所で店舗再開を決断し、二重ローンに挑む=16日、石巻市鹿妻南