HOME |日韓市民、原発を問う 講演会など交流広がる(河北新報) |

日韓市民、原発を問う 講演会など交流広がる(河北新報)

2014-11-25 10:44:08

脱原発を考える日韓の市民活動について話し合う郡司さん(左)と姜さん
脱原発を考える日韓の市民活動について話し合う郡司さん(左)と姜さん
脱原発を考える日韓の市民活動について話し合う郡司さん(左)と姜さん


東京電力福島第1原発事故を教訓に、日韓の市民が講演や交流を通じて原発の危険性を共に考える活動が広がっている。

福島の支援を続けるNPO法人事務局長でいわき市出身の郡司真弓さん(63)=横浜市=の思いに、韓国人の友人で首都大学東京の大学院で学ぶ姜乃栄さん(42)が応じた。今月には、韓国の原発の現状などをまとめたリポートが日本語に翻訳された。

◎いわき出身郡司さん「世界に現状訴えたい」/大学院生 姜さん「経済優先の構造同じ」

<実態知り学びたい>
「原発事故はどの国でも起こりうる。被害の実態を知り、市民に何ができるのか、事故を経験した日本から学びたい」。日韓の市民活動を研究している姜さんは交流の意義を語る。

 
きっかけは郡司さんの呼び掛けだった。昨秋、韓国が東北などの水産物輸入を全面的に禁じたという報道に違和感を持ち、「やみくもに恐れるのではなく、現状を知ってほしい」と友人の姜さんを福島県に誘った。

 
姜さんは原発に近い富岡町やいわき市などを見て回った。若い作業員が除染作業などに当たっている様子を初めて目の当たりにし、「若者が危険にさらされているのでは」と危機感を持った。誰もいないと誤解していた福島に多くの人が住むことも知った。

<今も続く安全神話>
韓国では23基の原発が稼働し、今後も増設する計画。事故前の日本と同じ安全神話が続いているというが、原発の事故隠しも発覚している。帰国した姜さんは1月、郡司さんと福島で太陽光発電の普及を図る島村守彦さん(56)=いわき市=を韓国に招き、ソウルなど4都市で講演会を開いた。

 
どの会場も100人以上が集まる盛況。「なぜ福島から逃げないのか」などと質問が相次いだ。郡司さんは多くの県民が放射線量を意識して生活していることを伝え、島村さんは「来て見てください」と訴えた。講演を聞いて、後に福島を視察に訪れる人も出るなど反響は大きかった。

 
韓国では今春から、福島産の綿の種を使った栽培が始まった。福島の子どもたちの保養キャンプも7月に実施されるなど、海を越えた市民交流の輪が拡大している。郡司さんは「世界はつながっている。日本だけで脱原発を訴えていても意味がない」と実感している。

 
<市民の役割を模索>
姜さんは「セウォル号の沈没の悲劇を機に、韓国人は経済が命に優先されることに批判を強めている。原発も同じ構造」と捉える。「原発事故は地域の崩壊といった問題にもつながっていく。国を超えて市民ができることを考えていきたい」

 
リポートは「原発-チェルノブイリ・福島そして釜山~海峡を越えた脱原発への道」。郡司さんが事務局長を務めるNPO法人「ふくしま支援・人と文化ネットワーク」が出版した。連絡先は同法人090(2171)4971

 

http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201411/20141124_65029.html