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世界の環境大臣への公開書簡 ~未来の世代のための呼びかけ~(WICPER)

2011-03-25 16:30:12

日本の原子炉大事故に関する世界環境大臣への公開書簡 (2011年3月14日:FOEジャパン訳)

 ハーグ国際司法裁判所元副所長で、ウィラマントリー国際平和教育研究センター(WICPER)創始者でもあるC・G・ウィラマントリー氏が、世界の環境大臣に向けて緊急の提言をした。同氏は「核兵器に反対する国際法律家協会」の議長も務めている。 

 (以下はその抜粋の訳)

 日本での地震とそれに伴う原子力発電所への被害は、世界全体の人々に衝撃を与え、非常に差し迫った警告を発しました。その明らかな危険性にもかかわらず、原子炉は世界中で急増しており、このことにより、人々の先天的な身体障害をこれから数世代にももたらす汚染の可能性の種が確実にまかれつつあります。

まだ生まれていない世代は、私たちと同じ人類の一員でありながら、現在発言権を持ちません。私たちはこれに乗じて、環境への責任を果たさず、その壊滅的な被害をもたらしています。私たちは、全ての市民がそうであるように、環境の後見人に過ぎず、所有者ではありません。諸政府の受託者であればさらにそうであり、世界の環境大臣はこれに関し特別な責任を負っているのです。

私たちは、継続する環境への被害を許すことによって、さらにこの危険性を助長しています。そして、自らの行動の影響を完全に認識しながらも、確実に未来の世代に対して犯罪ともいえる行為を行なっているのです。幼い子どもですら、地球上のいかなる権力者であっても、地震、津波、戦争、暴動、過失やその他の災害に対して保証しきれないことを知っています。

私たちは、これらの災害が長時間において、必然的に起こることをほぼ確実に知っているだけでなく、これらを排除する手段が未だに無いことも知っています。にもかかわらず、いかなる責任意識をも持たず、さらに多くの原子炉を建設しており、子孫に与える長期的な危険性を認識しながら、短期的な利点を追求してきています。

太陽エネルギーやその他の再生エネルギー源は世界の必要とする全てのエネルギーを供給できるにもかかわらず、原子力エネルギーに従事する少数の人々への多大な利益のために、この事実は無視されています。そして、これは世界の大多数の人々や、何世代にもわたる子孫たちに大きな犠牲を強いるでしょう。

私は、核兵器、原子炉や核廃棄物の危険性に対して、30年以上取り組んできた者としてあなた方に訴えています。早くは1985年に私は日本科学者協会において、これらの人類への大きな危険性について、日本の主要都市で講演を行いました。そして長年これらの危険性について、多くの判決や出版物、世界中での講演を通じて広めてきたにもかかわらず、私が最も恐れてきたことが起きていることに絶望せざるを得ないのです。さらに私たちが子孫への責任回避を続けるのであれば、事態は悪化するかもしれません。 
原子炉の継続と増加は、あらゆる人道法、国際法、環境法および持続可能な開発に関する国際法の全ての原則に反しています。アメリカ先住民の人々の伝統的な知恵は、コミュニティに関する重大な決定はきたる7世代に与える影響を考慮せずになされてはならない、と定めていました。また、伝統的なアフリカの人々の知恵は、コミュニティに影響を与える大きな決定は、祖先の人々、現在生きている人々、これから生まれる人々といった人類の3つの繋がりを考慮すべきと定めていました。そしてこれを無視した判断を偏ったものと見なしたのです。

現代の技術文明において、我々はこのような伝統的な知恵を軽視し、全ての環境法を基礎付けている地球への配慮の原則をも軽んじてきたのです。さらに、我々は、未来の人々に関心を寄せている世界の偉大な数々の宗教の知見をも軽視しています。

私は、我々の環境の後見人であるあなた方に新たな原子炉の建設の中止のために、素早い行動の必要性を訴えます。さらに、既存の原子炉の段階的撤去と代替エネルギー制度の検討の必要性も訴えます。世界の人々に対して、我々が直面している危険性を伝えなくてはなりません。また、原子炉の利点に関する情報の一方的な流れを変える必要があるのです。

このような行動を避けることは次世代の人々に対する犯罪となり、我々の子孫に対する信頼の裏切りとなりかねません。あなた方はこの危機において指導的な役割を果たす立場にあります。これは地球への配慮に関して大きな責任のあるあなた方への訴えです。どうか、あなた方に可能なすべてのことを行なってください。

時間は限られています。今すぐにも行動してください。

原文はこちらから
(抜粋・翻訳:FOEジャパン駒井英吾)