HOME10.電力・エネルギー |韓国・忠清南道が、アジアで初めて、脱石炭火力の国際イニシアティブ「PPCA」に参加。 |

韓国・忠清南道が、アジアで初めて、脱石炭火力の国際イニシアティブ「PPCA」に参加。

2018-10-03 18:33:14

korea1キャプチャ

 

 韓国の石炭火力発電所の密集地として知られる特別自治市の忠清南道(チュンチョンナムド)は、脱石炭火力の国際的イニシアティブである「脱石炭同盟(Powering Past Coal Alliance, PPCA)」へ加盟した。PPCAは英、カナダの主導で昨年の国連気候変動枠組条約第23回締約国会議(COP23)で発足した。アジアからの加盟は初めて。忠清南道は2050年までに石炭火力を撤廃し、再生可能エネルギー発電に転換する目標を立てている。

 

 (写真は、忠清南道にある保寧火力発電所)

 

 忠清南道は今月2日、韓国の扶余(プヨ)郡で開催された「2018 International Conference on Coal Phase-out and Energy Transition」(2018脱石炭エネルギー転換国際カンファレンス)でPPCA加盟を表明した。道内の唐津市と泰安郡にはそれぞれ発電総容量6GW強の石炭火力発電が稼動しているほか、道全体での石炭火力設備は30を数え、発電総量は18GWに及ぶ。その量はカナダの発電量の倍になる。PPCAの参加機関の中では最大の石炭火力規模になる。

 

 同道は2050年を目標とした「Energy Vision Plan」として、あらゆる政策・規制手段を活用して石炭火力の撤退・転換を推進することをうたっている。今回はその第一弾として2026年までに14の発電所を閉鎖するほか、発電量に占める再生可能エネルギー発電割合を、現状の7.7%から47.5%に引き上げるとしている。同時に、石炭火力発電事業に従事してきた従業員や周辺自治体の移行政策にも取り組むとしている。

PPCAキャプチャ

 またPPCA加盟に際して、韓国での新規石炭火力発電所の建設に反対することを表明した。道知事のSeung-Jo Yang 氏は「政府に対しても、石炭火力廃止のロードマップの作成を求めていくとともに、地方自治体のエネルギー政策の権限を拡大していきたい。新規建設の停止だけでなく、既存の石炭火力発電についても段階的な廃止を進め、環境に配慮したエネルギー転換を実現していきたい」と述べている。

 

 韓国の発電量の4割は石炭火力が占め、最も多い。次いで原発(30%)、天然ガス(25%)の順で、再エネ発電は2%レベルときわめて低い。しかし、大気汚染悪化の主因である石炭火力による健康被害は深刻で、2060年を見据えたOECDの調査でも、先進国の中で単位当たり、もっとも多くの死者を出すと推計されている。

 

 文在寅大統領は昨年就任後に、老朽石炭火力の停止・見直しを打ち出している。だが、エネルギーの安定供給を理由として、石炭火力からの撤退には慎重な姿勢をとっている。今回、石炭火力集積地の忠清南道が「脱石炭」を内外に宣言したことで、文政権の対応も迫られる。http://rief-jp.org/ct4/69951

 

 韓国、中国、日本の東アジア3カ国のエネルギー政策は、基本は石炭火力を軸に据えた政策で共通しているといえる。各国は国内で石炭主導の構造を変えていないだけではない。東南アジア等への石炭火力発電輸出では、お互いに競合する一方で、プロジェクトによっては協力関係を結ぶなど、「プロ石炭連合」の色彩も強い。今回の忠清南道の動きは、そうした「プロ石炭」体制に綻びが生じてきたことを物語る。

 

 PPCAを推進する英、カナダを代表する形で、英国代表のNik Nehta氏は「アジアで最初のPPCAメンバーが生まれたことを歓迎する。忠清南道知事、および道のチームと一緒になって、石炭からクリーン電力への移行を促進したい」とコメントしている。

 

 日本の企業、自治体で追随する動きは出てくるのだろうか。PPCAには2018年9月現在、英仏、イタリア、カナダ、オーストリアなど28カ国、カリフォルニア州やニューヨーク州などの18自治体、それにユニリーバー、バージングループ、BT、EDFなどの28企業・組織が加盟している。

https://poweringpastcoal.org/news/South-Chungcheong-Province-South-Korea-coal-Powering-Past-Coal-Alliance