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日立製作所の「英原発計画」凍結の方向。安倍政権の「原発輸出」政策、すべて行き詰まり(各紙)

2018-12-17 13:40:12

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 各紙の報道によると、日立製作所は、英国で計画してきた原発新設計画を凍結する方向で調整していることが分かった。事業資金が3兆円規模に膨らみ、出資企業を確保するのが困難になっているためという。先に、三菱重工業もトルコでの原発新設を断念を打ち出しており、安倍政権が推進する「原発輸出」案件は全て暗礁に乗り上げることになる。

 

 日立が輸出計画を進めてきたのは英中部アングルシー島で原発2基を新設する計画。約3兆円の総事業費のうち2兆円超を英政府が融資し、残り約9000億円については日立、英政府・企業、国内の大手電力や金融機関が3000億円ずつ出資する計画だった。

 

 英子会社「ホライズン・ニュークリア・パワー」を通じて、国内の電力各社との出資交渉を続けてきた。だが、福島第一原発事故を起こした東京電力ホールディングス(HD)は出資しない方向であるほか、中部電力、日本原子力発電(原電)なども追随の可能性があるという。官民連携事業へのファイナンスを軸とする国際協力銀行(JBIC)や日本政策投資銀行(DBJ)なども難色を示している模様だ。

 

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 各機関が出資に難色を示すのは、福島事故以降、原発の安全対策費用が高まっているほか、採算確保のカギを握る電力の買い取り価格が定まっていない点も大きい。英政府は、電気料金が大幅に上昇しないように買取価格を低く抑えたい意向とされる。コストが上昇し、収入が抑えられると、事業の採算性は低下する。

 

 また英政府は、先に建設を決めたイングランド西部での原発計画ヒンクリー・ポイントCで、政府補助金を巡って英国内外で議論が噴出、EU内では訴訟も起きたことから、これ以上の追加支援には応じられない姿勢のようだ。

 

 報道では「日立は事業継続の可能性を残す」とも指摘されている。だが、コスト・ベネフィットが不明確な環境での事業推進は、投資家からの批判を受けることは必至で、現状では事実上、撤退する公算が大きい。すでに同社は、日英両政府にこうした方針を非公式に伝えた模様、とも伝えられている。

 

 日立自身、現在100%子会社のホライズン社への出資比率を50%未満に引き下げて、子会社からはずして、将来のコスト負担を軽減したい意向とも伝えられる。事業主体が「及び腰」のように見える環境の中で、計画を推進してきた安倍政権がJBICやDBJの資金を使って、強引に後押しするのかどうか、政治判断が問われる状況でもある。

 

 日本の原発輸出政策は、ベトナムやリトアニアでも撤回や凍結など計画の見直しが相次いでいる。国内の原発政策が「福島事故」以降、展望を見いだせない中、出口として打ち出した「原発輸出」政策も暗礁に乗り上げると、安倍政権が推進する原発政策の「失敗」は明瞭になる。

 

 その安倍首相は来年1月に訪英を検討している。その際、Brexitの最終局面にあるメイ首相と、原発問題についても話し合う可能性があるとされる。「それどころではない」と言われるかもしれないが。

 

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