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太陽光発電の出力制御の回避装置を九州のゼネコンが開発。九州電力の出力抑制策への対応がヒントに(各紙)

2018-12-27 13:21:25

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  各紙の報道によると、太陽光発電の電力の出力制御問題を解決する「「逆潮流」抑制技術を九州の企業が開発した。化学プラントなどで利用されている「微分制御」の技術を応用し、太陽光発電で余った電力が電力会社の系統に流れる「逆潮流」を抑えるという。出力制御問題は九州電力管内で最初に実施されたが、電力会社が電力を制御する知恵を発揮できない中で、九州の需要家が技術力を発揮したことになる。

 

 日本経済新聞が伝えた。出力制御対応の技術を開発したのは、九州の松尾建設(佐賀市)。明治時代に創業した九州地場の名門ゼネコン。

 

 すでに同社では、開発した技術について特許を取得。6月に田中電子工業で実証試験を完了し、11月からは製造販売を担当するニシム電子工業(福岡市)の佐賀工場で実施運転を行って性能を確認済み。価格はパワーコンディショナーも含めて約1000万円で全国に販売する予定。出力制御問題は太陽光以外の風力発電でも発生するが、同装置は風力発電にも応用可能という。

 

開発された「逆潮流」制御装置
開発された「逆潮流」制御装置

 

 九州電力は今年10月、管内の太陽光発電を一時停止する国内で初めて始めて「出力制御」を実施した。需要容量よりも多い電力が太陽光発電から供給されることで、電力の需給バランスが崩れて大規模な停電が起きるのを防ぐためとされた。太陽光等の再エネ発電の広がりで、九電以外の既存電力会社も出力制御を予定しているところが増えている。

 

 電力会社によると、接続をそのままにしておくと、供給過多となり周波数が低下し、電力の安定性が阻害され、場合によると停電を引き起こす可能性もあるとしている。そこで余剰電力は接続されている再エネ事業者側に戻るように流れる。これを逆潮流と呼ぶ。現行の制度ではこの逆流電力を既存電力会社に売電することができる。しかし、既存電力会社は需要が少ない中での電力の買取りも、出力制御して逆潮流を抑える措置を講じる。

 

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 再エネ事業者は、出力制御・逆潮流の措置を受けずに、通常通り発電し、余剰電力が発生した場合は、蓄電等の措置で後日、利用できるようにすれば、設備の安定的発電が可能になる。このため、逆潮流を抑制する技術の開発が進んでいる。

 

 松尾建設は、これまで化学プラントなどで利用されている「微分制御」の手法で、空調機器の最大需要電力を自動調整する装置を開発している。今回はその技術を太陽光発電に応用、太陽光パネルからの電気の潮流を計測し、逆潮流を未然に抑えるシステムを開発した。

 逆潮流予防技術には、他にも、発電実績を電力メーターから取得したり、IT技術で予測する制御方法等もある。同社の技術の特徴は微分制御によって、遅延なく逆潮流を防げる点という。操作も一体的にパネルで行うことができる。需要量以上の発電量を計測すると、余剰電力分だけを速やかに蓄電池に送り、充電するシステムも取り入れられている。

 同社によると、この装置を導入した自家消費用太陽光発電事業者は「出力抑制規定除外」になるという。電力の地産地消が進めば、FITの足かせになっている送電線の容量不足問題の軽減につながる、としている。

https://r.nikkei.com/article/DGXMZO39413980W8A221C1LX0000?type=my#AAAUAgAAMA