HOME9.中国&アジア |中国の石炭需要、ピークアウトは2025年ごろに。パリ協定のNDCより「5年前倒し」。2050年には現行より39%減少。減少傾向は緩やかに。中国国有企業系シンクタンクが指摘(RIEF) |

中国の石炭需要、ピークアウトは2025年ごろに。パリ協定のNDCより「5年前倒し」。2050年には現行より39%減少。減少傾向は緩やかに。中国国有企業系シンクタンクが指摘(RIEF)

2019-08-27 08:57:00

CNPC2キャプチャ

 

  世界最大の石炭大国である中国の石炭需要がピークアウトするのは2025年、との予測を、中国国有企業系のシンクタンクがまとめた。同年をピークとして、2035年には現行(2018年)比18%減、2050年には同39%減になるとしている。現状の中国の石炭需要は増大しており、世界的な温暖化が加速する中で、同国に対する懸念が深まっていることへの「説明」ともいえる。

 

 予測をまとめたのは、中国の国有石油企業の「中国石油天然気集団公司(CNPC)」傘下の「中国石油集団経済技術研究所(CNPC Economics and Technology Research Institute)」。

 

 中国はパリ協定での国別削減公約(NDC)で、CO2排出量を2030年までにピークアウトさせると約束している。現状の全エネルギーに占める石炭の比率は、2012年の68.5%から昨年は59%へと減少している。

 

CNPC1キャプチャ

 

 ただ、全体のエネルギー消費需要が増大していることから、年間の石炭消費量は前年比38億2000万㌧増、前年比3%増と増加基調が続いている。今年上半期だけで石炭鉱山の生産能力は、新たに1億4100万㌧分が増えたほか、石炭火力発電設備もさらに建設が進んでいる。http://rief-jp.org/ct4/92923?ctid=75

 

 こうしたことから、海外からも、中国が「脱石炭」のエネルギー政策に転換できるか、ということに疑念の声が出ている。今回のCNPC研究所の報告はそうした疑念に答える形となった。NDCの目標を前倒しする形での2025年のピークアウトを宣言したうえで、2035年18%減、2050年39%減と段階的に「脱石炭」のプロセスを踏むとの方向性を示した。

 

 エネルギー全体に占める石炭の比率は、再生可能エネルギーや天然ガス、原子力発電等の増加によって、2035年に40.5%に割り込むと予想している。

 

 CNPC研究所は「中国の石炭需要は緩やかに減少していくため、世界全体での石炭消費需要も10年以内にピークアウトする」と予想している。中国の石炭需要割合は世界全体のほぼ半分を占めているが、今後の需要減少によって、割合も2050年には全体の35%にまで減少する、としている。

 

 研究所の副所長のLi Ruifeng氏は「石炭は今後15年以上は、中国の主要燃料の座を維持し続けるだろう。同時に、西部地域の小規模な炭鉱等は、より規模が大きく、効率的な鉱山に集約・代替されていく。一方、中国東側沿岸では、当分は外国産石炭の輸入が年間2億㌧ペースで継続する」と述べている。

 

 同氏の説明は、2035年ころまでは、緩やかな需要減は続くが、豪州等の海外からの石炭輸入は当分の間、安定的に推移すると展望するもので、豪州等の石炭輸出国の懸念に配慮を示したともいえる。「ただし、重大な貿易制限が起きないという条件付きだが」としている。

 

 中国は9月に国連が開く気候サミットで、パリ協定のNDCを強化する宣言をすることが期待されている。今回のピークアウト時期の「5年前倒し」はその一つと思われる。また、習近平主席が推進する「一帯一路イニシアティブ(BRI)」において、脱石炭、グリーンインフラ推進を宣言する可能性もある。

http://www.cnpc.com.cn/en/

http://www.coalchina.org.cn/detail//19/08/23/00000002/content.html