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タイ、ラオス、マレーシアの3カ国。3か国の電力取引(LTM-PIP)の送電能力3倍増で合意。ASEAN域内電力網の軸に。タイはAPGのハブセンターを目指す(RIEF)

2019-09-13 22:10:23

LTM3キャプチャ

 

 タイ、マレーシア、ラオスの3カ国は、ラオスで発電した水力発電電力を、タイの送電網を経由して、マレーシアに供給する3カ国電力取引(LTM-PIP)の増強で合意した。送電量は現行の100MWから、2021年1月から3倍の300MWに増やす。アジアの電力網は確実に統合化に向かっている。

 

写真は、㊧からラオスのエネルギー鉱業相のKhammany氏、㊥タイのエネルギー相Sontirat Sontijirawong氏、㊨マレーシアのエネルギー・科学・技術・環境・気候変動相のYeo Bee Yin氏)

 

  3か国(LTM)は、ASEAN Power Grid(APG)の一環として、ラオスの水力発電電力を、タイの電力網を経由して、マレーシアに輸出する「LTM-PIP(電力統合プロジェクトPIP)」を締結、第一フェーズとして、年間100MW の電力の融通を実施している。

 

LTM22キャプチャ

 

 今回はこの協定が、今年末に切れるため、延長するとともに、2021年からは3倍増に送電量を拡大することで合意した。ラオスは水力電力開発が盛んで、国内需要の4倍以上の発電量を有し、その多くを外資の独立系電力会社等が海外に輸出している。

 

 ASEAN各国は経済発展が引き続き順調で、エネルギー需要が高いほか、温暖化対策でCO2排出量の少ない水力発電への需要も高まっている。こうしたことから、「LTM-PIP」のフェーズ2契約では売電量を3倍に拡大することとした。

 

 発電国のラオスと、需要国のマレーシアを仲介する形となったタイのSontirat氏は「3か国協力は、ASEAN諸国が進めるAPGネットワークのマイルストーンになる。今回、ラオス、タイ、マレーシアの3カ国の電力網の結合だが、次のフェーズではシンガポール、ミャンマー、カンボジアにも拡大したい」と展望している。

 

 タイは別途、ミャンマーとの間で、250MWの電力を融通する検討を進めている。ミャンマーは急速に経済成長が進んでおり、電力確保が大きな課題にもなっているためだ。ミャンマーは現在、必要な国内電力需要の50%程度しか国内で供給できていないという。

 

APG222キャプチャ

 

 今回、ラオスからの電力調達拡大を決めたマレーシアは、隣国シンガポールとの電力網の統合化交渉を進めている。現在、両国の間は1100MWの容量を持つ海底ケーブル送電線の建設中だ。今年末にはそのうち最初の550MW分の送電が始まるという。残りも来年4月までにつながる予定。

 

 マレーシアのエネルギー等担当相のYeo Bee Yin氏によると、さらにその先については、インドネシアとの間で、スマトラ島、サバ州、北カリマンタン、サラワク州等との系統連携を議論しているという。Yeo氏は「各国間の電力網の相互接続によってAPGとエネルギーの安全保障は強化される。域内すべての国にとってエネルギーコストの低下につながる」と述べている。

 

 各国はAPGの相互融通電力を、温暖化対応に資する再エネ電力を増やす方向だ。タイの国家科学技術開発庁(NSTDA)は今回、ASEANエネルギーセンターと覚書を締結した。石炭等の化石燃料発電に代えて、太陽光や風力等の再生可能エネルギー電力を増やすことを目指す。

 

 タイ・エネルギー相のSontirat氏は「ASEANエネルギーセンターとの覚書に基づき、2025年までにASEAN全体での電力消費に占める再エネ比率を14~23%に引き上げたい。ASEANはクリーンエネルギーの採用に向かっており、それによって温暖化に対応していく」と指摘している。

 

 同国は、こうしたAPGの電力ネットワークにおいて、ASEANのハブとしての役割を演じる考えだ。タイ政府のエネルギー政策・計画局代表のWattanapong Kurovat氏は「タイはASEAN地域の電力網のセンターになる。そのための地域のエネルギー・ハブとしてのビジョンとインフラを整備している」と自信を見せている。

 

http://www.dailyexpress.com.my/news/140249/lao-thai-m-sia-project-enhances-asean-multilateral-power-trade/