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アウトドア用品のモンベル、登山用品素材を転用して、医療機関向け防護服や、一般向けマスク製造。本業を生かしたCSR活動が光る(RIEF)

2020-05-03 00:31:11

monbel1キャプチャ

 

 アウトドア用品大手のモンベル(大阪市)が、登山用品の寝袋カバーの素材を応用して医療機関向けの防護服を作成、新型コロナウイルス対策に奮闘する医療機関等に無償提供を実施している。さらに、速乾性の布マスクもネットでの予約抽選販売も開始した。登山用品の素材を生かした防護服、マスクへの転用は、本業を生かしたCSR活動といえる。

 

 (写真は、自らミシンをかけて防護服を試作するモンベルの辰野会長:モンベルサイトから)

 

 防護服の作成は、モンベル会長の辰野勇氏が、大阪市内の病院から防護服不足の相談を受けて、寝袋カバーの素材の転用を思いついたという。生地は米国デュポン社の高密度ポリエチレン不織布「タイベック」。軽量で破れにくい素材で、すでに医療現場のほかアスベストや放射能、化学物質等を扱う「困難現場」で使われている。

 

寝袋カバーの素材から作成した防護服(モンベルのサイトから)
寝袋カバーの素材から作成した防護服(モンベルのサイトから)

 

 クライマーとしても鳴らした辰野会長自らがデザインし、ミシンをかけて基本となるプロトタイプ品を試作した。紐はたすき掛けにして前で結ぶ仕組み。チベットやモンゴルの民族衣装にデザインが近いという。5月末までに2300枚を作る予定で生産に入っている。作るそばから、医療機関に無償配布し、すでに10以上の医療機関に提供したという。また中国にある協力工場からも防護服3万枚を仕入れ、6月をめどに提供するとしている。

 

 一方、5月2日からネットで販売を始めたマスクは、Tシャツなどに用いられる速乾性機能素材「ウィックロン」を使った布製。石川県の縫製部のある国内工場で製造している。一枚1200円で、9万枚を製造。ゴールデンウィーク(今年は、ステイホームウィーク)中に予約を受け付ける。代金は同社が運営するアウトドア義援隊による各医療機関等への支援活動費に充当する。https://www.montbell.jp/generalpage/disp.php?id=455

 

ネット予約抽選を始めた速乾性マスク
ネット予約抽選を始めた速乾性マスク

 

 モンベルはこれまでも、地震や台風等の被災地支援を展開している。きっかけは、1995年の阪神淡路大震災。当時、被災地を支援するために「アウトドア義援隊」を結成、辰野氏も地震直後に現場に駆けつけ、瓦礫の撤去や物資支援などを行った。この時の経験から、災害現場ではアウトドア用具やスキルが役立つと実感。その後、2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震、昨年の台風19号での長野・千曲川の氾濫などでも活躍している。

 

 辰野氏は21歳の時、グランド・ジョラス北壁、マッターホルン北壁、アイガー北壁のアルプス3大北壁を世界最年少(当時)で登攀したことで知られる。その後、28歳でモンベルを立ち上げ、現在ではグループ全体の売上850億円と成長している。小回りの効く行動力は、まさに登山の経験と実践力が生み出したといえる。

 

 CSR活動に熱心とされてきた大手企業が、今回のコロナウイルス感染の前に、本業でもCSR活動でも、十分な取り組みができていない現状と比べ、モンベルの行動力が新鮮に映る。

 

https://www.montbell.jp/

https://number.bunshun.jp/articles/-/843323