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最新「ダイバーシティ企業」トップ200 企業の多様性を総合評価、トップは東芝(東洋経済)

2013-06-03 15:43:16

トップとなったのは東芝、多様な人材活用、育児・介護で高かった
トップとなったのは東芝、多様な人材活用、育児・介護で高かった
トップとなったのは東芝、多様な人材活用、育児・介護で高かった


女性、障害者、外国人、そしてLGBT(性的マイノリティ)。多様な人材を活用して企業の競争力を高めようというダイバーシティ(多様性)推進の動きが進んでいる。これまで日本人・男性・既婚者(主に専業主婦の妻)・健常者がメインプレーヤーであった日本企業にも少しずつ変化が出始めているように見える。

東洋経済CSR調査では、ダイバーシティに関連する項目も多く調査している。今回はこれらのデータを基に作成した「ダイバーシティ企業ランキング」をご紹介する。

このランキングは昨年まで東洋経済が行っていた「ダイバーシティ経営大賞」の1次審査(東洋経済社員による審査)を行う際の参考データとして作っていた評価データをベースにしている。これまで外部公表していなかったが、「ダイバーシティ経営大賞」が第5回で終了となったため、このノウハウを残すため、今後は評価得点を毎年作成してランキングとして発表することにした。今回の公表にあたり、一部評価項目の見直し、配点の変更などを行い、これまで以上に納得性の高いものを目指した。toshibaimg_567b04e1ee00eba152c75064834b2188882819

評価は、①(ダイバーシティ推進の)基本姿勢(満点12点)、②多様な人材活用(同12点)、③女性の活躍(同33点)、④育児・介護(同19点)、⑤働きやすさ(同28点)の5部門。各部門の評価項目(6ページ目に掲載)を得点化し、それらを合計した総合得点(満点104点)でランキングを行った(データは2012年時点)。

いずれも加点方式で得点がマイナスにならないなど、基本的な仕組みはCSR企業ランキングと同じ。ただ各評価部門の最高得点はそれぞれ異なる。特に「女性の活躍」は33点と配点が大きい。これは日本企業のダイバーシティの取り組みが女性活用中心のためだ。「ダイバーシティ経営大賞」の応募企業も、女性活用を最重要テーマとするケースが多かった。このように日本の現状にあった評価としている。なお、評価部門の「多様な人材活用」には女性に関する項目は外しているので注意していただきたい。

首位の東芝は3部門で満点


ではランキングを見ていこう。トップは東芝で総合得点は94点。同社は「多様性の受容と尊重」「ワーク・ライフ・バランスの実現」「意識風土の改革」を3つの柱とし、ダイバーシティ推進を進める。また、女性比率、女性役職比率とその男女差、外国籍従業員数、障害者雇用比率などをKPI(重要業績評価指標)として、数値の目標も設定している。

各部門の得点では「ダイバーシティ推進の基本姿勢」「多様な人材活用」「育児・介護」が満点。外国人管理職の存在や2.17%と高い障害者雇用率。取得者全員が対象の「職場復帰プログラム」など幅広い産休・育休取得をサポートするプログラム。被介護者1人につき3年、育児では小学校卒業まで認められている短時間勤務制度などで高評価となった。

「働きやすさ」は充実した各種制度で27点。社内公募制度、FA制度、キャリアアップ支援制度など多様な制度を整備。有給休暇取得率(80.8%)も業種平均を上回り、高い評価につながった。ただ、残業時間が若干長いことなどで、わずか1点だが満点に届かなかった。

一方で「女性の活躍」は満点33点に対して24点。2012年7月時点では、女性役員比率2.4%(1人)、女性部長職比率2.1%(62人)、女性管理職比率3.6%(276人)といずれも低い。

日本企業は社内昇進が普通のため、女性役員や女性部長を増やすためにはその前段階の管理職を多く育てることが不可欠だ。同社は全従業員3万6754人のうち女性が4291人と全体の11.7%が女性だが、30歳未満で見ると21.0%と倍近くになっている。この比較的多い若い世代をどのようにキャリアアップさせていくかが今後のカギとなりそうだ。

2位はトップと1点差の総合得点93点で資生堂、富士通、ソニーの3社が並んだ。

資生堂は「女性の活躍」が30点と高得点。女性従業員も多く、女性管理職比率22.9%(249人)、女性部長職比率12.1%(7人)などの数値は、大手が多い上位では他社を圧倒している。ただ、「働きやすさ」は24点と1位の東芝を3点下回った。30歳平均賃金や有給休暇取得率などが若干劣っていることが主な理由。ほかにも一部データが開示されずに該当項目の得点がつかないなどで、総合得点で東芝に1点届かなかった。

富士通は各部門ともバランスよく得点。特に「女性の活躍」は26点で東芝を上回った。同社は「ダイバーシティの推進は経営戦略」とし、「2020年度末、新任幹部社員に占める女性比率を20%にすること」を目標に掲げ、取り組みを進めている。

だが、数字的にはまだ道半ば。女性管理職比率4.0%(215人)、女性部長職比率2.6%(84人)、役員1.6%(1人)と同業他社と比べると高いものの絶対値としては、まだこれからといったところだ。

ソニーもいずれの部門も高得点だった。ダイバーシティ推進の中期ビジョンに、人種、女性活躍、障害者雇用、性的指向とLGBTも対象に入れ、先進的な取り組みを行っている。「女性の活躍」は27点と富士通も上回る。勤続年数は女性18.2年に対して男性16.7年と女性のほうが長い。小学校3年生までの子どもを有する社員が対象の週1~2回の在宅勤務制度など、子育てしながら働ける環境を整えている。

5位は髙島屋、第一生命保険、三井住友海上火災保険の3社(91点)。以下、8位が日産自動車、東京海上ホールディングスの2社(90点)、10位損害保険ジャパン(89点)が続く。

上位で目立つのがトップ10社中4社を占める保険。いずれも「女性の活躍」や「働きやすさ」が高い評価となっている。

各社の強い点、弱い点


各部門別の得点を見ると各社の強い点、弱い点も見えてくる。たとえば93位の三越伊勢丹ホールディングス(74点、三越伊勢丹のデータ)は「女性の活躍」は26点と高得点ながら、「多様な人材活用」は5点。113位の日本精工(72点)は「働きやすさ」は27点だが、「女性の活躍」は12点。

ほかにも制度はそろっているが、基本姿勢が明確ではなく、得点が伸びなかった企業もあった。このように本ランキングは各社の強い点、弱い点を認識するためのデータとしても参考になるかもしれない。

この評価は比率だけでなく人数なども組み合わせているため、大企業が上位となりやすい。たとえば、「女性の活躍」では「女性社員数」と「女性社員比率」を評価項目としているが、これは採用数が多いことで女性が活躍する職場を多く提供していると考えられるためだ。社会全体でのダイバーシティ推進の貢献度が高い点も評価では考慮している。

ただ、現状では中堅企業などが上位になりにくい評価となっていることも確かだ。次回以降は、こうした点も改善していきたいと考えている。

さて、ダイバーシティ推進に必要なのは、制度だけではないとよく言われる。このことについてゴールデンウイーク中に東京で開かれたあるLGBTのセミナーで、LGBTの方々の話に気づかされることがあった。

多くの人が話していた「尊重しあい承認されることがやりがいにつながる」という言葉。これまで女性活用や障害者雇用の現場でも同様のことを聞いてきた。

多少、給料が安く制度が充実していなくても、「お互いを尊重しあい、そのうえでしっかり話し合う」風土がある職場は、どのような人にとっても働きやすく能力を伸ばせる環境となるようだ。このような職場であれば、声高に「ダイバーシティ推進」などと言わなくても、多様な人材を活用することができるのだろう。

このランキングは基本的に定量的な数値や制度などで評価を行っている。こうした風土的なことをどこまで反映させることができるかは、今後の課題である。

http://toyokeizai.net/articles/-/14131