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キリンビール、ミャンマーでのロヒンギャ迫害事件で、加害者軍・当局へ複数回の寄付。迫害実施の治安部隊に使われた可能性も。人権NGOのアムネスティ・インターナショナルが告発(RIEF)

2018-06-15 18:00:28

 

  人権団体アムネスティ・インターナショナルは14日、ミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャに対する迫害問題で、日本のキリンホールディングスの子会社が、迫害する側の軍と当局に対して、3回にわたって寄付をしていた、と指摘。キリン側も寄付をしたことを認めたと公表した。

 

  キリンホールディングスは、2015年にミャンマーのビール最大手、ミャンマー・ブルワリーの株を55%取得した子会社化した。残りの株は、軍関係者で構成するミャンマー・エコノミック・ホールディングス(UMEHL)が保有している。さらに昨年8月、キリンはUMEHLとの別の合弁事業として、マンダレー・ブルワリー株51%を取得する許可を得ている。

 

Kirin3キャプチャ

 

 こうしたミャンマー市場への進出で国軍関係企業との関係を強化する中で、昨年9月1日から10月3日かけて、キリンは子会社化したミャンマー・ブルワリー社を通じて、当局に3回の寄付行為を行っていたという。寄付総額は3万㌦で、アムネスティは、「軍の総司令官が寄付を受けている様子を動画に撮っていた。総司令官によると、寄付は治安部隊のものだった」と説明している。

 

 キリンはアムネスティの問い合わせに対して、「献金は暴力の被害者を支援するため」と説明したという。これに対して、アムネスティは、寄付の式典の様子がテレビでも放映され、寄付を受けたミンアウンライン総司令官が「寄付の一部は、ラカイン州北部で展開する治安部隊や州職員に渡るだろう」と語っていることを紹介している。

 

 アムネスティは「ロヒンギャの人々に対する民族浄化を行っているまさにその部隊に、寄付をする企業があるとは、信じられない。寄付が、人道に対する罪を犯している部隊の作戦に使われる恐れがあるほか、キリン子会社の社員が式典に出席しており、キリンがロヒンギャに対する軍の対応を支持すると受け止められかねない」と指摘している。

 

Kirin2キャプチャ

 

 こうした問題提起をしたうえで、アムネスティは「日本政府は、自国の企業に対し、事業展開する国・地域を問わず、人権侵害に加担させないという責任を負う。直ちに、キリンホールディングス子会社の寄付を調査すべきだ」と要請している。

 

 日本国内の報道によると、キリンホールディングスの広報は「寄付は約6000ドル(約66万円)。合弁契約で、ミャンマー・ブルワリーの資金を軍のために使うことは禁じられている」とする一方で、「具体的な使い道を追跡できないなど問題点があった」と認めているという。

 

 キリンは今年2月に公表した「キリングループ人権方針」において、「私たちのあらゆる事業活動の土台となるのが人権の尊重。それぞれの国・事業での活動全般に渡って関係する様々な人権課題について理解を深め、適切な行動をとっていくことが企業に求められてる」とうたっている。また国連グローバル・コンパクトにも署名している。

 

 さらに、人権方針の中では、「当該国の法規制と国際的な人権規範が異なる場合は、より高い基準に従い、相反する場合には、国際的に認められた人権を最する方法を追求する」と明記している。しかし、「明記」しても、実行しないのでは意味がない。

 

 今月初めに公表したキリンの統合報告書では、ミャンマー・ブルワリーの生産状況と、ミャンマーのビール市場の成長度を取り上げ、社会課題については省エネ・水資源保全の取り組みに言及している。だが、ロヒンギャ問題については一言も触れていない。都合のいい「社会・環境問題」だけを取り上げ、自社がコミットする「都合の悪い社会問題」は、“統合対象”から除外するのでは、統合報告書とは言えないだろう。

 

http://www.amnesty.or.jp/news/2018/0615_7454.html

https://www.kirinholdings.co.jp/irinfo/library/integrated/pdf/report2018/kr2018_13.pdf