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住友商事系のフィリピン・ミンダナオ島のバナナ事業会社、労働争議が人権侵害問題に発展。環境NGOら9団体が住商らに真相究明と再発防止を要請(RIEF)

2019-03-04 17:24:08

sumifuru1キャプチャ

 

 環境NGOなど9団体は、住友商事の関連会社で、フィリピン・ミンダナオ島で日本向けバナナを栽培する「スミフルフィリピン」社が、農園・梱包工場で、正規雇用や団体交渉権等を求める労働者への深刻な人権侵害(殺傷を含む銃撃、放火等を含む)を続けているとして、住友商事と、スミフルジャパンに対して、人権侵害の真相究明と再発防止策の徹底等を求める要請書を提出した。

 

 (写真はスミフルのフィリピンでの工場の様子)

 

 要請文を提出したのは、環境NGOのアジア太平洋資料センター(PARC)やFOEジャパンなど9団体。

 

 労働争議が起きている「スミフルフィリピン」は、住友商事が展開するバナナブランド「スミフル」を提供するサプライヤーのフィリピン法人。住友商事系列の持ち株会社Summit Global Management II BV(オランダ) が49%所有するスミフルシンガポールの100%子会社。

 

バナナの収穫の様子
バナナの収穫の様子

 

 フィリピンのミンダナオ島コンポステラ・バレー州のバナナ農園で働く労働者で組織する労働組合 NAMASUFA(正式名称:Nagkahiusang Mamumuo sa Suyapa Farm)は、フィリピン労働雇用省からも認知 されている正規の労働組合であり、スミフルフィリピン系列農園で働く 900 余名が参加している。

 

 要請文によると、同組合は、すでに約 11 年にわたり、これら農園で働く非正規の労働者の正規雇用や団体交渉権等を求めてきている。これに対してスミフル側は、非正規の労働者は請負事業者の社員だとして、雇用 関係を否定している。フィリピン労働法では6ヶ月の試用期間を経た労働者は正規雇用されることを定めている。

 

 スミフルの主張する請負形態だと、同国の労働法で規制対象となる「労 働のみの請負(Labor-Only Contracting)」となり、日本で一般的に「偽装請負」と似た雇用慣習になるとして問題性を指摘している。

 

バナナの出荷の様子
バナナの出荷の様子

 

 こうした労使対立から労働組合は、2018年10月1日からストライキを決行(700名以上が参加)している。その後、労働運動を巡って、銃撃事件・放火・暴力行為などが頻発しているという。要請文が指摘する主な衝突事例は次の通り。

 


• 2018年10月11日 軍・警察・スト破りの労働者らが、ストライキでピケを張る労働者を暴力的に鎮圧。17名以上が負傷。


• 2018年10月31日 ストに参加してきた組合員の一人Danny Boy Bautista氏が、18時頃、地元の市場近くで所属不明の男2名に銃撃され、死亡。


• 2018年11月11日 ストに参加してきた組合員の一人Jerry Alicante氏が、自宅前で所属不明の男2名から銃弾2発を受けて、負傷。


• 2018年12月15日 組合代表のPaul John Dizon氏および元代表のVicente Barrios氏の両自宅と組合事務所が放火により全焼。

 

 要請文では、こうした事件について、会社側は関与を一切認めていないが、現地住民や現地メディアによれば、現在、戒厳令下にあるミンダナオ島での軍や警察による組合員を狙った弾圧であるという見方が強いという。国際人権NGOアムネスティ・インターナショナルも問題視している。

 

 日本の環境NGOらは、こうした問題の指摘と、迅速な対応を住商等に求める要請文を提出したが、提出後1週間を経ても、スミフルの対応に変化がないことから、「今回の事態は、『国連 ビジネスと人権に関する指導原則』や『経済協力開発機構(OECD)多国籍企業行動指針』、ESG投資などで、企業の責任ある投資が国際的に求められる中、住商など日系企業の人権に対する姿勢が問われる」と指摘。「親会社」に相当する住商の対応を批判している。

 

  スミフルフィリピンのサイトを見ると、「現地の人たちとパートナーシップを大切に、徹底した品質管理を進めています」と記載。現地の工場の模様や、バナナの収穫の一連の流れを説明している。https://www.sumifru.co.jp/reason/quality/



 要請を行ったのは以下の団体。

 特定非営利活動法人 アジア太平洋資料センター(PARC)、 特定非営利活動法人 APLA、認定特定非営利活動法人 WE21、 ジャパン エシカルバナナ・キャンペーン実行委員会、 認定特定非営利活動法人 国際環境 NGO FoE Japan、 有限会社カフェスロー、特定非営利活動法人 「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、認定特定非営利活動法人 地球の木、 Fair Finance Guide Japan

 

http://foejapan.org/aid/doc/190301.html

 

http://www.parc-jp.org/kenkyuu/sumifru/sumifru_petition02222019.pdf