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IHI 航空機のエンジン整備点検で、無資格検査、数年にわたって継続。海外のLCCからの受注中心。安全面への配慮欠落。ガバナンス体制の不備を露呈。国土交通省も問題視(各紙)

2019-03-06 16:48:45

IHI5キャプチャ

 

 各紙の6日の報道によると、IHIIが民間航空会社から受託した航空機のエンジン修理や整備事業で、資格のない従業員が検査を手掛けていたことがわかった。こうした不正な検査は数年間にわたって続けられていたという。国土交通省は不正があった同社瑞穂工場(東京都瑞穂町)に対して航空法に基づく立ち入り検査を実施、問題を確認したとしている。

 

 IHIは、報道を受けて、6日、「当該事業に監視、国土交通省東京航空局の立ち入り検査を受け、エンジン部品修理の検査に不適切な事象があったことが判明したことは事実」と認めている。対象となる航空機の安全性には現時点では問題があったとの指摘は出ていない。

 

 報道によると、無資格者による航空機エンジンの整備作業が行われていたのは、同社の瑞穂工場(東京都瑞穂町)。エンジンを分解して洗浄・修理をした後に、ブレードなどの部品を目視で検査する工程で無資格検査をしていたとみられる。また同作業のほかにも、広範囲な不正行為があった可能性がある、との報道もある。

 

 IHI7キャプチャ

 

 IHIは全日本空や日本航空を含む国内外の航空会社から航空機の整備作業を受託している。この中には格安航空会社(LCC)企業も多い。航空機は、通常、一定の飛行時間を超えると分解して点検・整備する「オーバーホール」が義務付けられており、その作業を請け負っていた。

 

 同社によると、年間に整備するエンジンは約150基で、不正が数年間続いていたとすると、数百基の航空機のエンジン整備が不正に行われていたことになる。 IHIは、主に費用を抑えて低料金で運航するLCCから主に受注しており、今後も就航路線などの拡大に伴い伸びが見込まれていることから、埼玉県鶴ケ島市に新しい整備工場を建設中。

 

 日航と全日本空も同社に整備の一部を委託しているが、両社とも、現時点で運航への影響はないと説明している。国内LCCのピーチ・アビエーション(大阪府田尻町)やバニラ・エア(千葉県成田市)、春秋航空日本(同)、エアアジア・ジャパン(愛知県常滑市)などは委託していない。ただ、アイベックスエアラインズ(東京)は、エンジンの中で放射状に取り付けられるブレードで「無資格者による検査があった」との説明をIHIから受けたと報道されている。同社は自主的に部品交換を決めたという。不正な検査を受けた機材を持つ航空会社は海外のLCCの割合が高いとみられる。

 

 IHI6キャプチャ

 

 国交省の調査や自社での原因究明作業のため、当該の瑞穂工場の整備ラインは2月下旬から停止中。航空会社から整備を受託したエンジンが工場内で留め置かれている状況で、作業が長期化すると、航空会社の運航に支障をきたし、損失補償が必要になる可能性もある。このためIHIは他社に整備を委託することも含め対策を検討しているという。

 

 IHIはこれまでも、たびたび、ガバナンス問題での課題が露呈している。2007年には過年度にわたる大幅な決算訂正を公表。初の「特設注意市場銘柄」に指定され、一時は上場維持も危ぶまれた。2018年3月期まで4年連続で期初の純利益見通しを下方修正している。

 

 遡ると、2004年(当時は石川島播磨重工業)には、同じエンジン整備事業でデータ改ざんがあったとして、国交省から業務改善勧告を受けている。10年以上を経て、同じ部門で不祥事が発生したことは、同社のガバナンス体制の欠如を示すものとの見方も出ている。

 

https://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201903/CK2019030602000122.html

https://www.ihi.co.jp/var/ezwebin_site/storage/original/application/062de3b11823aaf20dd4edd74671ff2f.pdf