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欧州委員会、「サーキュラーエコノミー計画2.0」公表。消費者に「修繕する権利(RtR)」確保。製品のデザイン段階で「使用後の再利用・再生」加味。資源とエネルギーの効率化促す(RIEF)

2020-03-13 21:58:09

Circular1

 

  EUの欧州委員会は11日、2030年までにEUの一般廃棄物を半減させるほか、消費者に「修繕する権利(Right to Repair: RtR)」を確保することなどを盛り込んだ新「サーキュラーエコノミー(循環経済)行動計画(2.0)」を公表した。委員会は同行動計画を、欧州グリーンディール(EGD)政策の柱の一つに据えている。行動計画の柱として、「Sustainable Product Policy:SPP」の法制化を打ち出し、製品のデザイン段階に「使用後の再利用・再生」を盛り込むことを求めていくとしている。

 

   EUは前ユンケル委員長時代の2015年に、使い捨てプラスチック等削減を掲げたサーキュラーエコノミー行動計画を公表している。このため、今回の案は、現行計画に上積みする「2.0」と位置付けられる。委員会は、同計画の推進で、域内のCO2削減と資源効率化が進み、関連産業の拡大でEUのGDPは2030年までに0.5%増えるほか、新規の雇用が70万人創出されるとしている。

 

 計画の柱になる「SPP」の法制化は、製品からの環境影響の80%はデザインによって生じることを踏まえ、従来の「take -make-use-dispose」の直線的な流れを、「take -make -use-circular」の循環形に切り替えることを目指す。

 

Circular3キャプチャ

 

 すでにEUにはエネルギー効率化を進めるエコデザイン指令や、エコラベル、グリーン調達基準等が制定されており、それなりの成果をあげている。しかし、これらはいずれも罰則を伴わない自主的な活動にとどまっている。またEU市場で流通するすべての製品の持続可能性かつ循環性を高めることを確実にする、包括的な基準はまだ定まっていない。

 

 こうした背景から、委員会はエコデザイン指令をエネルギー関連から発展させて、「循環」の視点をデザインフェーズに盛り込む形でのSPP法制化を進めるとしている。そうしたイニシアティブを推進するうえで「サステナビリティ原則」の設定の必要性を提案している。

 

 それらの原則に基づき、SPPが対応すべき分野として、以下の8分野を例示した。

① 製品の耐久性の改善、再使用可能性、高品質化と修繕可能性、製品内の有害化学物質の処理、エネルギー・資源効率化の増大

②製品の機能と安全性の向上確保とともに、製品中の再生資源等の増大

③再製品化や高品質リサイクル化のし易さ

④カーボンと環境フットプリントの削減

⑤使い捨ての制限と、早期の製品旧式化による買い替え促進への対処

⑥使用期限未了の製品を破棄する行為の禁止措置の導入

⑦製造者が製品の販売後も製品のライフサイクルを通して性能についての責任を負う『製品のサービス化』へのインセンティブ付与

⑧デジタルパスポートやタグ、透かし等を導入した製品情報のデジタル化

⑨異なったサステナビリティ成果に基づく製品への価値づけ

 

Circular2キャプチャ

 

 これらの分野での対応を進めるとともに、EUの廃棄物法制の改正によって、2030年までに一般廃棄物の半減を目指すほか、容器廃棄物を減少するための新たな目標の設定も想定している。包装容器の減少のためには、これまでの様に自主的な対応では限界として、義務的な規制の導入が必要としている。

 

 委員会は2030年までに、EU市場のすべての包装拠点(スーパーや小売店等)で、再利用、リサイクル製品を、経済的に可能な方法で導入することを目指す。また「サーキュラー・電機製品イニシアティブ(Circular Electronics Initiative)」を立ち上げ、消費者の「修繕する権利(RtR)」を確保するため、パソコンやスマホなどの電機製品の、再利用性、修繕可能性、部品のアップグレード可能性等を確保し、製品寿命の長期化を促進することを目指す。このうち、パソコンやスマホに対する「消費者の権利」として、2021年までにRtRの実現を進める。

 

 衣料品廃棄物については、別途、2025年までに域内での衣料廃棄物を選別回収するガイダンスを打ち出す方針だ。廃プラスチックについては包装材や建設材料、自動車等においてリサイクルプラスチックの使用を義務付ける要件を整備するほか、マイクロプラスチックを意図的に加えるような活動について禁止する。このほか、ビルの建設等や食品廃棄物対策等も盛り込んでいる。

 

 欧州委員会副委員長のFrans Timmermans氏は「欧州での製品からの資源リサイクル率はわずか12%。多くの製品があまりに安易に壊され、再使用、再生・修繕されずに廃棄されている。あるいは使い捨てとなっている。今回の計画は、製品の製造方法を転換し、消費者にサステナブルな製品を選択する力を付与することを目指すものだ」と強調している。

 

 サーキュラーエコノミーの必要性は、温暖化問題とも密接に関連する。委員会によると、EUの温室効果ガスの排出量の半分は、資源開発・掘削や製造工程等から生じるとしている。したがって、サーキュラー経済への移行無しには、2050年までのカーボンニュートラルの達成は困難、と警告している。

  https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_20_420

https://ec.europa.eu/environment/circular-economy/pdf/new_circular_economy_action_plan.pdf