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東京農工大学の研究グループ、カシューナッツ殻の資源化をベトナム、タイの現地研究者らと連携、国際コンソーシアム構築。途上国の地域バイオ資源の有効活用と事業化促進へ(RIEF)

2020-03-31 21:58:30

kashuu3キャプチャ

 

 食用のカシューナッツの殻から「グリーンプラスチック」の開発を進めている東京農工大学の研究グループは、原料となるカシューナッツが豊富に存在するベトナムとタイの研究者、実務家との連携を深め、国際コンソーシアムを構築する協議に入った。ベトナムではパイロットプラントの構築も予定している。途上国での地域バイオ資源の有効活用と事業化を推進したい考え。

 

 コンソーシアム構想を推進するのは、同大学大学院工学研究院応用化学部門の兼橋真二助教らのグループ。カシューナッツから抽出したカシューオイルベースの従来の製品は、人体に有害なホルムアルデヒド、重金属触媒、揮発性化合物等が用いられてきた。これに対して、兼橋助教らの開発では、環境負荷の高い化合物は一切使用しない環境調和型である点が特徴だ。https://rief-jp.org/ct12/92628

 

 研究グループは、カシューオイルから独自開発のエポキシ樹脂や、原料のカシューオイルをアリル化して生成したアリルカシュー(無色透明な液体)とチオール硬化剤等によるチオール・エン反応による光重合で硬化させた材料等を、途上国での産業開発に活用することを目指すという。

 

多様に変わるカシューナッツ資源
多様に変わるカシューナッツ資源

 

 エポキシ樹脂は、環境対応を視野に入れて、既存材料の代替や改質用途に使えるほか、無色透明材料については、コーティング材やフィルム、エラストマーなどへの適用を目指す。またウレタンやアクリルへの適合や、生分解性等への応用も検討する。

 

 連携を目指すベトナムは、カシューナッツを年間100万㌧規模で生産している。同国ではすでに食用後に廃棄される殻からカシューオイルを抽出している。殻は重量比で10~20%が油分のため、安定的なバイオマス資源とみなされている。一部はエポキシ樹脂やフェノール樹脂、木工用塗料等に活用されており、これらを兼橋助教授らが開発した技術で高付加価値化できる可能性がある。

 

 タイでは現地の大学や研究機関等との連携を強化して、カシューナッツ殻だけではなく、サトウキビ、パーム椰子殻、天然ゴミ、稲わらなどの未利用廃棄資源の有効活用を進める予定だ。ベトナムでもコーヒー廃棄物等を活用した新たなバイオマス資源として展開する考え。

 

 計画では今後2年以内に、日本国内で各個別案件での共同研究を進める日本の連携企業を中心とした連携組織を構築する。その後、3年程度を想定して、ベトナムで試作用のパイロットプラントの設置を進める。同事業には国内の連携企業も参画し、国際コンソーシアムへと広げる。

 

 兼橋助教は、「技術のイニシアティブは日本が保持しながらも、バイオ原料が豊富な国々で一貫生産体制を実現することで、バイオベースポリマーの社会実装を最短距離で実現できる体制を立ち上げたい」と期待している。

 

https://www.mirai-kougaku.jp/explore/pages/200131.php