HOME12.その他 |新型コロナウイルス感染。サントリーは消毒液、トヨタは人工呼吸器の生産へ。ただしいずれも米国など海外市場。国内でのCSR活動が「二の次」なのはなぜか(各紙) |

新型コロナウイルス感染。サントリーは消毒液、トヨタは人工呼吸器の生産へ。ただしいずれも米国など海外市場。国内でのCSR活動が「二の次」なのはなぜか(各紙)

2020-03-28 18:54:43

cokorna1キャプチャ

 

 新型コロナウイルスの感染が急拡大している米国で、日本企業にも対策取り組みが広がっている。サントリーホールディングス(HD)が、米子会社を通じて消毒液の生産を始めるほか、トヨタ自動車も米国で人工呼吸器の生産支援を始めると発表した。顔全体を保護する医療用フェースシールドも生産する。感染防止、感染者の救護に、産業のカベを超えて取り組みものだ。同時に、日本国内でも、感染拡大の懸念が浮上しているので、動きの鈍い政府の指示を待つのではなく、率先して取り組みを牽引してもらいたい。

 

 (写真は、新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真(米国立アレルギー感染症研究所))

 

 各紙の報道によると、サントリーはウイスキーの主力商品「ジムビーム」の生産拠点があるケンタッキー州政府などから、原料のアルコールを転用した消毒液の製造の要請を受けた。今月末から生産を開始する。すでに先行する形で25日から、原材料のアルコールを米ケンタッキー大学に提供を始めている。同大の大学病院で使用する消毒液に使っている。

 

santory1キャプチャ

 

 消毒用のアルコールは、米政府の定める消毒液やアルコールの基準を満たしている。ウイスキーなど酒類生産量を落とさずに対応を続ける方針だ。また欧州でも同様に原料のアルコールを活用した消毒液の生産を検討している。イタリアに続いて感染者数が増大しえいるスペインのマドリード郊外のセゴビアにある蒸留所で準備中。カナダでも西部アルバータ州にある蒸留所で消毒液またはアルコールを生産する検討を始めている。

 

 一方、トヨタ自動車は27日、感染した重篤者をサポートする人工呼吸器の生産支援を始めると発表した。顔全体を保護する医療用フェースシールドも生産する。米国では感染者の急増で、医療機器の不足が深刻な問題となっており、トランプ政権は大統領権限で非常時に企業活動を指示できる「国防生産法」に基づいてGM等に人口呼吸器の製造を指示した。トヨタも自社の遊休工場やノウハウを使って協力体制をとる。

 

 トヨタは近く人工呼吸器の製造メーカー2社と提携を結び、生産能力を引き上げる支援をする。フェースシールドは週明けから米国内の複数の工場で3Dプリンターで量産し、テキサス州やインディアナ州などの病院に提供する予定。マスクについても生産準備に入っており、フィルターを提供する協力先企業を探している。

 

トヨタが米国で生産を予定する医療機関向け簡易フェースガード
トヨタが米国で生産を予定する医療機関向け簡易フェースガード

 

 また、ドライブスルー方式のウイルス検査の態勢を整える病院や地域の支援にも取り組んでいる。北米トヨタの小川哲男最高執行責任者(COO)は「危機と闘うため必要な医療機器や物資を迅速に届けられるよう専門知識やノウハウを提供したい」とコメントしている。トヨタは23日から北米の全工場を休止しており、休止期間を4月17日にまで延長を決めている。

 

 異業種によるマスク等の生産は、日本でも経済産業省が各社に補助金付きで要請していると報道されているが、主要企業で対応しているのは、シャープの動きが伝えられているぐらい。米トランプ政権の要請ならば動くが安倍政権の要請には言を左右にしているのだろうか。安倍首相が「マスク不足は間もなく解消します」と約束してから、すでに1カ月以上が経過しているが、薬局やコンビニから消えたマスクや消毒液は、いつまでたっても姿を現さない。

 

 トヨタが取り組む人工呼吸器も、日本では十分に配備されているのだろうか。政府や東京都は、オリンピック先送りが決まったら、それまで慎重だった感染拡大の懸念を急にアピールし始め、外出自粛等を打ち出している。その一方で、実際に感染が拡大した際の患者対策については、よく見えないままだ。

 

 感染防止先としてのマスク、消毒液不足が長期に続くほか、人口呼吸器配備の被害者救済策への備えについては、トランプ政権とは違って、安倍政権は一切口にしていない。外出自粛等は競うように口にするようになり、経済対策には力が入るが、感染を抑え、感染した患者を救護する体制づくりへの、政府・行政の対応には不透明感が続く。企業のCSRも、国内より海外中心で、ちぐはぐさが目につく。官民とも、この国は大丈夫なのかーー。

 

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200328&ng=DGKKZO57309270X20C20A3TJC000

https://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/202003/CK2020032802000253.html