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日本政府の新型コロナウイルス感染への検査体制の不備、在日米大使館だけでなく、独大使館も指摘。国際的に「統計偽装」への疑念の目が注がれている(RIEF)

2020-04-08 00:07:41

Abe1キャプチャ

 

  安倍首相は7日、新型コロナウイルス対策で緊急事態宣言を行った。東京、埼玉、千葉、神奈川、大阪、兵庫、福岡の7都府県で人と人との接触機会を大幅に抑制するほか、総事業規模108兆円の経済対策を発表した。感染者数が増加し続ける不安の中での対策だが、「本当にどれだけの人が感染しているのか」という基本的な不安への対応策はあいまいなままだ。他の国のように広範囲なウイルス感染検査を実施しようとしない日本政府に対しては、米国だけでなく、ドイツも懸念を表明していたことがわかった。

 

 新型コロナウイルスに感染しているかどうかは検査をしなければわからない。検査手法はウイルスの遺伝子を調べるPCR検査が知られ、日本以外の国々では、簡易検査用の診断キットや、自動車でのドライブスルー方式、患者が電話ボックスのようなブースに入り、医師が外から診療する「ウォーキングスルー方式」などで感染の有無を確認している。

 

 しかし、日本では厚生労働省の判断で、原則として「発熱が37度5分以上が4日間以上続いた」などの条件を設定。専門の外来で医師が必要と判断した場合に各都道府県の地方衛生研究所や保健所で受検できるという手順が必要とされている。この結果、日本での検査件数は、検査可能能力の2割程度しか実施されていないという状況が続いてきた。

 

在日米大使館
在日米大使館

 

 こうした状況に、米大使館が今月3日の在日米国人向けに発した「Health Alert(健康警告)」で、「大規模な新型コロナ検査を実施しないという日本政府の決定によって、新型コロナ感染者を正確に把握することが困難になっている。日本のヘルスケアシステムに対する信頼は持っているが、日本のシステムが今後十分に機能するかどうかは予測しがたい。感染が爆発的になった場合、在日米国人は十分な医療ケアを日本では受けられないかもしれない」と警告した。

 

 米大使館の指摘に対して、政府は菅幹事長は6日、「PCR検査の数が少ないとの指摘があるが、死者の数は多くない」と反論した。しかし、海外で懸念されているのは、PCR検査を絞っているので、コロナ感染での死亡者が通常の肺炎による死亡者として処理されているため、コロナ死者数が少なく発表されているのでは、という疑問だ。

 

 米大使館の指摘の少し前の3月24日、在日ドイツ大使館も同様の懸念を、在日ドイツ人向けに「同胞への手紙」の中で示していた。「(日本では)検査数が少ないため、かなりの規模の未報告感染が発生していると考えられる」としたうえで、「日本における感染のリスクは真剣に評価することができない。実行されたテストの数が少ないため、報告されていない感染が多数発生していると考えられる」と述べている。

在日独大使館
在日独大使館

 

 ドイツ大使館による異例の日本の厚生行政への“批判”に対して、独大手紙の1つヴェルトが「ドイツ外交官による非外交的な声明」と題した記事を掲載したことを、ニューズウィーク電子版が紹介している。

 

 それによると、「パンデミックが始まったとされる中国より、地理的にも経済的にも日本よりずっと遠い国々であるアイルランド、イスラエルやルクセンブルグなどでの感染数より(日本の感染数が)はるかに少ないこと、そしてこの数が人口比でも驚くほど小さいこと、さらに、高度な医療システムを持つ国の割には死亡率が高すぎることなどから、日本では有効な検査がほとんど実施されていないだろう」と指摘。

 

 ドイツは6日現在、コロナウイルスの感染者数が世界上位4位だが、徹底したPCR検査を実施しており、死亡率が低いことで知られている。ドイツ人には、日本のように検査が限定されている状況は非常に危険と映っているようだ。

 

 ヴェルトは「夏季オリンピックが今年開催されることになっていたので、(日本は) 最高の状態で世界に自分を紹介したかったのだろう。政府は長いこと、夢をあきらめ、夏季オリンピックを延期することをためらっていた」と推測したうえで、「安倍政権の指導は十分なのか? 政府は問題について過小評価しているのか? 9年前の福島での原発事故後の不始末以来、日本人は政権への信頼を大幅に失っている」とまで書いている。

 

山口一男シカゴ大教授
山口一男シカゴ大教授

 

 各国大使館だけではない。シカゴ大学の山口一男教授(社会統計学)は東京新聞の取材に答えて次のように指摘している。

 

「(日本のコロナウイルス感染の発表数は)実際には感染しているのに把握されない『暗数』の割合が大きく、統計がゆがんでいる。(日本の感染増加数が他国より低いのは)検査数を絞ったことで感染者を把握できていないからで、この結果(水面下の)感染を拡大させた」

 

「死亡者数も年間10万人前後に上る一般の肺炎死亡者の中に隠れてしまう。ゆがんだ感染者数では、感染の拡大状況などの評価はできず政策判断の材料にも使えない。信頼できるデータを国民と共有し、透明性を持って合理的に政策を進める姿勢が欠落している」

 

https://jp.usembassy.gov/health-alert-us-embassy-tokyo-april3-2020/

https://japan.diplo.de/ja-de/aktuelles/-/2327752

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/04/post-93044.php