HOME |英環境省、今月予定の使い捨てプラスチックストロー等の使用禁止を10月に延期。新型コロナウイルス対策を優先と。環境団体等は「コロナ」にかこつけた産業界寄り政策と批判(RIEF) |

英環境省、今月予定の使い捨てプラスチックストロー等の使用禁止を10月に延期。新型コロナウイルス対策を優先と。環境団体等は「コロナ」にかこつけた産業界寄り政策と批判(RIEF)

2020-04-17 23:47:25

plastic2キャプチャ

 

  英国の環境省(The Department for Environment, Food & Rural Affairs:Defra)は、4月から実施する予定だったプラスチック製のストローやマドラー、綿棒等の使用禁止措置を、10月まで延期すると発表した。新型コロナウイルス感染対策を優先するための措置としている。環境団体等は、コロナ対策で廃プラ対策を遅らせるのはおかしいと反発している。

 

 英国は、2018年4月に、使い捨てのプラスチックストロー、マドラー、綿棒の販売禁止を2020年4月から実施することを宣言していた。これはEUが定める廃プラ指令より、1年前倒しで実施するもので、英国の環境政策でのリーダーシップをアピールするものでもあった。英国ではイングランドだけで年間、約47億本の使い捨てプラスチックストローが使用され、マドラーが3億本、20億個のプラスチック製綿棒が消費されているという。

 

 今回、DEFRAは「経済が新型コロナウイルス感染対策という大きな課題を負っているので、この規制の開始を10月に延期する。使い捨てプラスチックの使用を抑え、自然環境への脅威に対応する姿勢に変わりはない」と規制の延期を説明。あくまでも一時的な措置であることを強調している。

 

4月15日時点の英国での新型コロナウイルス感染者と死者数
4月15日時点の英国での新型コロナウイルス感染者と死者数

 

 今回のDEFRAの措置には、各方面から驚きと警戒の声があがっている。英議会の環境監査委員会(EAC)議長のPhilip Dunne議員(労働党)は「政府の対応に非常に失望している。これらの使い捨てプラスチック製品は、回収したりリサイクルすることが不可能なもので、結局、埋め立てか海洋廃棄に繋がってしまう。コロナウイルス対策に政府が全力で対処する重要性はわかるが、だからといって、環境対応の政策を遅らせることにはつながらないはずだ」と指摘している。

 

 プラスチックの代替ストローである紙製ストローを開発してマクドナルドなどに提供しているTranscend Packaging社のCEO、 Lorenzo Angelucci氏も「使い捨てストロー等の使用禁止の延期は最小限の範囲にとどめるべきだ。すでにわが社をはじめ、英国の多くの企業は、代替品の提供準備を終えている。英国ではイングランドだけで年間50億本近くもストローが捨てられており、廃プラ対策も緊急性を有する」と述べている。

 

 環境団体等は、コロナウイルス感染対策の効果がはっきりしないと、10月への延期が、次は来年へと、さらにはもと先に延長されるのではないかとの疑念を示す。というのは、すでに政府はコロナ対策で増える食事の宅配便で使用するプラスチック袋を、有料化の対象外とする臨時措置をとっている。廃プラ対策がなし崩し的に後退していく可能性が出ているためだ。

 

 plastic66キャプチャ

 「A Plastic Planet」の共同創設者のSian Sutherland氏は「もしこうした要請(ストロー販売禁止の延期)がNHSや医療従事者からあがっているならばやむを得ないが、本当にそうだろうか。そうではないだろう。プラスチック業界のロビイストがこれまでも政府に働きかけ続け、その結果が政府の延期決定につながったのだ。英国民は産業界が引き続き汚染と破壊を続けるのではなく、自然を保護することを求めているという点は、今まさに明確になっている」と批判している。

 

 「City to Sea」の代表、Rebecca Burgessは「われわれは今回の延期が、プラスチック製造への政府規制等を緩和し、遅らせることの始まりではない、という確約を政府に求めている。政府はすでに食品宅配便のプラスチック袋の一時的無料化措置に踏み切った。われわれは事態の変化に迅速に対応する必要があるが、同時に、規制の延期や緩和等は大きな環境コストを伴うを忘れてはならない」と強調している。

 

 EUの使い捨てプラスチック使用禁止指令は2019年に採択され、2年の猶予を経て2021年に各国で実施される予定。同指令に対してもEU内のプラスチック関連産業、企業からの延期圧力がかかっているとされるが、今のところEUは予定を変更していない。先行する形でフランスは今年1月からプラスチック製のカップや皿などの使用を禁止に踏み切った。同国は、来年1月からはストロー、マドラー、ナイフ・フォーク発泡ボリスチレンの容器・ボトル、風船用スティック等に広げる方針だ。

 

 しかし、EUの環境団体等からも、英国はEUから離脱するとはいえ、同国のプラスチック規制の延期がEUの指令を採択する各国の規制にも影響を与えるのではとの懸念が出ている。コロナウイルス感染の克服の重要性を大義名分にして、他の重要政策を後回しにしようとする動きは、洋の東西を問わず起き得る。何がコロナ対策のために必要で、何が必要ではないか、あるいは関係ないか、ということを明確にする必要がある。

https://www.dailymail.co.uk/news/article-8222735/Plastic-straws-stirrers-cotton-bud-ban-delayed.html

https://www.gov.uk/government/consultations/single-use-plastic-banning-the-distribution-andor-sale-of-plastic-straws-stirrers-and-plastic-stemmed-cotton-buds-in-england