東京オリンピック・パラリンピック組織委員会、「持続可能性大会前報告書」公表。CO2削減率は1割以下、熱帯林調達問題には言及無し。NGOは「見せかけのサステナビリティ」と批判（RIEF）
2020-04-30 22:53:32
東京オリンピック・パラリンピックは、来年に延期されたが、東京2020組織委員会は30日、サステナビリティ（持続可能性）に配慮したオリンピックにするための「持続可能性大会前報告書」を公表した。NO2排出量は大会を通じて約300万㌧が想定されるが、削減可能なのは1割以下の28万㌧にとどまる。新国立競技場などの施設の建設に、東南アジアの熱帯林破壊による木材が使われた問題については言及しておらず、環境NGOらは、「見せかけのサステナビリティ報告書」と批判している。
東京オリンピックの組織委員会は、大会の準備から大会後に至る全ての段階において持続可能性に配慮することを目指し、「持続可能性に配慮した運営計画」を定めている。それに基づき、大会後、「持続可能性報告書」を公表する予定だが、大会の準備・開催の各フェーズでも持続可能性配慮の目標に向けた準備状況を公表することになっている。昨年3月には、「進捗状況報告書」を公表、今回は「大会前報告書」を公表した。
掲げる目標は、調達物品のリユース・リサイクル率99％、再生可能エネルギー電力使用100%、大会時の廃棄物のリユース・リサイクル率65%、国連「ビジネスと人権の指導原則」への初準拠、「Zero wasting（資源を一切ムダにしない）」「Toward Zero Carbon（脱炭素社会の実現を目指す）」等。
今回の「大会前報告書」では、大会で想定されるカーボン・フットプリント（CO2発生量）は何も対策を打たない場合、約301万㌧になるとしたうえで、新規の恒久会場設備の建設への省エネ技術導入、仮設観客席やテント等にリース・レンタルの活用。再エネ電力、大会関係車両への電気自動車（EV）、燃料電池自動車（FCV）、（プラグインハイブリッド車（PHV）の使用等によって、28万㌧の削減を見込めるとしている。
しかし、削減率は9.3%にとどまる。それ以外の9割以上のカーボン・フットプリントについては、オフセットクレジットで埋め合わせするとしている。東京都と埼玉県はカーボン排出量取引を実施しており、そこで発生するクレジットの提供を受ける予定。ただ、9割以上を外部クレジットでカバーするイベントは、カーボン・ニュートラルとは言い難い。
環境NGOのレインフォレスト・アクション・ネットワーク（RAN）等が問題視するのは、今回の報告書には、新国立競技場や有明アリーナの建設に際して、東南アジアから調達・使用された熱帯林の木材についての記述が全くない点だ。RANは「東南アジアの熱帯林破壊によって得られた木材が新国立競技場等の大会関連施設に調達された問題の記述がなく、東京2020大会主催者は調達の失敗を認めていない。破壊された熱帯林には絶滅危惧種のオランウータンの生息地も含まれる」と指摘している。http://japan.ran.org/?p=1612
NGOの批判を受けて、組織委員会と東京都は2018年、建設に使用したコンクリート型枠合板調達のモニタリング調査を実施した。だがRANなどは、その調査では、インドネシアで熱帯林が破壊された現場を対象に含めず、他の現場の調査などから「持続可能な森林管理に取り組んでいることが確認できた」と記述しているという。こうした点から「（組織委は）問題に向き合う姿勢も見られない」と批判している。
そのうえで、「大会自体の延期に伴い、組織委員会は木材調達の失敗と教訓を報告書に課題として記録し、大会の持続可能性実現ための明確な道筋を示すこともできたはずだ。しかし、それもしていない」と指摘し、「失敗を認めず、教訓から学ばない姿勢では『悪しきレガシー』が残される」と懸念を示している。
https://gtimg.tokyo2020.org/image/upload/production/hmdliqgxhxh5nghtl3ge.pdf
https://gtimg.tokyo2020.org/image/upload/production/ux6uptoxv8oscvgp5l9h.pdf
Research Institute for Environmental Finance