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グローバルに広がる「ファストファッション」、CO2排出増だけでなく、膨大な衣料品廃棄増で海洋汚染や、水資源不足の要因に。研究論文が「スローファッション」への転換を警告(RIEF)

2020-05-26 21:09:42

fast033キャプチャ

 H&MやZARA、ユニクロなど、流行を取り入れた低価格の商品を次々と供給する「ファストファッション」が、環境に大きな負荷を与えているとする論文が公表された。毎年のように膨大な衣料品が生産され、それに伴って毎年膨大な売れ残りの未使用商品や布地等が廃棄される。これらの廃棄衣料品にはプラスチックも含有しており、海洋プラ汚染の原因にもなっている。研究者は「ファストファッション」から、モノを長く使う持続可能な「スローファッション」への転換が必要と指摘している。

 (上図は、衣料品のタイプ別生産量の推移。横切る破線は、人口数の推移)

 調査をまとめたのはフィンランドのAalto(アールト)大学のKirsi Niinimäki大などの研究チーム。環境科学誌Nature Reviews Earth & Environmentに掲載された。

 論文によると、 世界の一人当たりの年間衣料品消費量は1975年から2018年の間に、5.9kgから13kgへと倍以上増えている。消費総量は2000年に6200万㌧だったが、このままでは2030年までにほぼ倍の1億200万㌧に拡大すると推計された。加えて、販売する前に廃棄される衣料品廃棄物(布地、未使用品等)が年9200万トンあるという。

グローバルな衣料品の流れ
グローバルな衣料品の流れと環境負荷の展開

 こうした衣料品消費量の増大は、「ファストファッション」のビジネスモデルの増大が貢献していると指摘している。誰もが知っているブランドを、低価格で、毎年流行を変え、さらに季節の変化を先取りしてセールを打ち出すことで、「急いで買わなくちゃ」という消費者心理をあおるパターンで、消費者に、消費を繰り返し衝動買いを誘う。

 ファストファッションのビジネスモデルは、旧来の伝統的なファッションビジネスを凌駕し、2000年以降、毎年2%の衣料品生産を生み出してきた。生産増の一方で、製品の価格は低下をたどってきた。消費者一人当たりの衣料品+フットウェアへの支出額も、EUでは1950年代は所得の30%までだったが、2009年には12%に、2020年には5%にまで下がっている。

 低価格化はさらに消費行動を刺激する。一方で、消費者は手持ちの衣料品が多いので、新たに買った衣料品を着る機会は低下する。米国では平均的消費者は5.5日ごとに一着の衣料品を買っており、欧州では1996年から2012年の間に、衣料品購入量は40%増加した。欧州で一人当たりの年間衣料品の購入量はイタリアが14.5kg、ドイツ16.7kg、英国26.7kg、デンマーク等の北欧4カ国は13kg~16kgという。

衣料品のサプライチェーン
衣料品のサプライチェーン

 消費者は、たくさん衣料品を保有することから、ひとつの衣料品を着る平均時間は、英国やノルウェーでは、2005年に比べて36%減少した。衣料品を「着古さず」、「着新しい(?)」まま、次はどうなるかというと、まとめて廃棄することになる。「断捨離」という都合のいい表現も普及している。

 世界で生産された繊維素材の60%はファッション産業で使われている。残りはインテリアや、産業用織物、農業用、医療用等の衛生素材等に活用される。繊維生産のうち51%はポリエステルが占め、次いで天然素材のコットンの25%。ポリエステルは価格、加工のし易さ等でファストファッションの中心素材になっている。その生産・加工は低コストの新興国や途上国で展開され、製品は欧米や日本に大量に輸出される。

 これらのファストファッションの生産に伴って、グローバルなCO2は8~10%(年間40億~50億㌧)増大している。また繊維の処理、染色等で年間79兆㍑の水が使用され、産業関連水汚染の20%を引き起こしいるという。ポリエステルが中心のため、廃棄後、細かく破砕されるとマイクロプラスチック化し、海洋汚染につながる。現在の海洋マイクロプラ汚染要因の35%を占め、年間19万㌧分が海洋に流出している。残りの年間9200万㌧は埋め立てられたり、焼却され、こちらも環境汚染につながっている。

 論文は、業界に大量生産・大量消費のビジネスモデルの抜本的変革を求めるとともに、消費者についても、「衣料品の購入を減らし、必要なものを長く使う必要がある」と指摘。持続可能な持続可能な「スローファッション」に立ち戻るよう訴えている。ファストファッションに「踊らされない」消費行動が求められている。

https://www.nature.com/articles/s43017-020-0039-9