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マイケル・ムーア氏の最新作「人間の惑星」、You Tubeから削除。温暖化対策推進を「攻撃」と環境保護派が反発。映画で使用した映像の著作権者がクレーム(RIEF)

2020-05-27 08:43:16

PlanetoftheHuman02キャプチャ
 

  突撃ドキュメンタリー映画で知られるマイケル・ムーア氏が再生可能エネルギー開発の裏側を告発した「Planet of the Humans(人間の惑星)」がYou Tubeから削除された。ヒット映画「猿の惑星」をもじって、環境保護や温暖化対策の推進も、ムーア氏の「突撃」の前では聖域ではないことをアピールする作品だが、環境派からは激しい不満が出ていた。今回、ムーア氏らが編集で採用した映像の撮影者から著作権違反の訴えがあったことから、You Tubeが削除に踏み切った。

 

 (写真は、㊧マイケル・ムーア氏、㊥ジェフ・ギブス氏)

 

 映画はマイケル・ムーア氏がエグゼクティブ・プロデューサーを務め、「人類という単一の種が、地球という惑星を支配することは、持続可能か」と問いかけた内容だ。ムーア氏と仕事をしてきた環境活動家でもあるジェフ・ギブス(Jeff Gibbs)氏が監督を務めた。http://rief-jp.org/ct8/102294?ctid=

 

PlanetoftheHuman01キャプチャ

 

 温暖化対策の太陽光、風力発電が、実は大量のCO2排出を生み出し、バイオマス発電・燃料は、膨大な森林破壊につながっている等を、突撃取材で浮き彫りにしている。米環境NOGのシェラクラブ、350.org、「不都合な真実」で温暖化問題の“伝道師”と称されるアル・ゴア元副大統領もやり玉にあげられている。

 

 このため、欧米の環境NGOらは、「反温暖化対策論者に『塩』を送るようなもの」と、反権力と見做されてきたムーア氏が「転向した」と批判する向きまで現れた。こうした中で、映画で使用されている内モンゴルでのレアメタルの開発状況の著作権者である英写真家のトビー・スミス(Toby Smith)氏が、ムーア氏の映画に対して、自らの映像の使用を許可していないとして、You Tubeに著作権侵害を申し立てた。

 

 スミス氏は、エネルギー環境問題を手掛けてきたが、「ムーア氏の映画のメッセージには合意できない。そうした映画に自分の作品が使われることは受け入れられない」と説明。映画会社と交渉するより、掲載しているYou Tubeに削除を求めた、としている。

 

「権威」の虚構はすべて暴く!意気軒高なムーア氏
「権威」の虚構はすべて暴く!意気軒高なムーア氏

 

 これに対して監督のギブス氏は、「映画を引きずり降ろし、一般の人が閲覧することを妨害する今回の試みは、『人間の惑星』に対する政治的検閲による露骨な行動だ。映画は、環境運動のある部分が、いかにウォールストリートに取り込まれ、いわゆる『グリーン資本主義』に陥っているかを、真剣に議論しようというものだ。それを封じるのは著作権の誤用だ」と真っ向から反論している。現在、You Tubeと問題解決策を講じているとして、映画の再公開を目指す姿勢を示している。

 

 実際のところはどうなのか。ムーア流の突撃手法で、環境運動を牽引してきた米NGOのCerersや350.orgのBill McKibben氏らが再エネ事業が引き起こす課題等についての矢継ぎ早の質問にちゃんと答えられない場面や、アルゴア氏への批判も、やや狙い撃ち的な雰囲気でもある。

 

 一方で、米国でのバイオマス開発の実態は、生態系を真っ向から破壊しているケースが少なくないのは事実で、それを告発する環境NGOもいる。またカリフォルニア州に林立する風力発電等が砂漠の生態系を無視しているのも間違いない。砂漠は不毛の地ではなく、そこにも繊細な生態系が息づいている。

 

 また、再エネの対象の太陽光や風力は持続可能でも、太陽光発電のパネルや風車の支柱、タービン等は経年劣化後は、環境負荷を高め、持続可能ではないという認識が、多くの環境保護派の間で十分でないのも事実ではないだろうか。

 

 「グリーン」なら何でもいいのか。ただ、だからと言って「グリーン」の裏側ばかりを強調すると、現状の汚染企業を擁護し、温存することになってしまわないかーー。やはり、ムーア氏の作品は物議を醸しだす。

https://planetofthehumans.com/