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鹿島、揮発性有機化合物(VOC)による土壌・地下水汚染を効率処理する「循環井戸方式」開発。従来より20%コスト削減見込む(RIEF)

2020-06-19 23:20:06

kashima001キャプチャ

 

 鹿島は、工場跡地などで揮発性有機化合物(VOC)に汚染された地下水を、土中で薬剤(微生物)を循環させて効率的に浄化する手法を開発した。二重管構造のパイプ状の井戸を複数土中に設置、井戸の上下深度の片方から地下水を吸収する一方で、もう片方から薬剤を地中に注入して循環させ、土中のVOCを浄化吸収する。隣接する別の井戸では上下逆の操作をすることで、地中の井戸間の地下水を全体的に循環させてVOCを浄化する仕組みだ。

 

 (上図は、鹿島が開発した「循環井戸」から薬剤を添加した際の循環イメージ)

 

 VOCはトルエン、キシレン、酢酸エチルなど多種多様な物質の総称。油脂成分の溶解能や難分解性、不燃性などの特性があることから、これまで、IC基盤や電子部品等の洗浄剤や、金属部品の前処理洗浄、塗料・接着剤の溶剤、塗装業、印刷・インク業、クリーニング業等で広く普及してきた。

 

実証実験での浄化範囲
実証実験での浄化範囲

 

 しかし、VOCを吸引すると頭痛やめまいの原因になるほか、中核神経や肝臓・腎臓機能障害、発ガン性を示すことが報告されている。大気中に放出されると、光化学スモッグ等の原因になる。土壌汚染、地下水汚染として滞留したままだと、工場も、工場跡地も、売買に影響を与えている。

 

 特に土中で地下水がVOCに汚染されると、周辺の土地にまで影響を与えてしまう。鹿島が開発したVOC吸着法は、「地下水サーキュレーターD3(ディースリー)」と名付けられている。独自に考案した二重管構造の井戸を汚染地に複数設置し、微生物処理工法(嫌気性バイオスティミュレーション)で、薬剤を効率的に土中で循環させる。井戸を設置するだけの従来工法に比べて、浄化用の井戸の本数を大幅に削減でき、コスト低減になるという。

 

循環型井戸の構造
循環型井戸の構造

 

 鹿島では昨年4~9月の実証実験の結果、24時間、安定した流量での循環運転ができることや、井戸から14m離れた地点のVOCも浄化できることなどを確認。従来は数m間隔で設置していた井戸を最大28m間隔まで広げることができ、従来の工法に比べて約20%のコスト低下が見込めるとしている。

 

 2017年の土壌汚染対策法改正では、VOCの規制対象としてクロロエチレンが新たに特定有害物質に追加されている。同社では「従来よりも浄化対象範囲が広がることになり、低コストなVOC汚染水の浄化技術に対するニーズが高まっている」として、今後、土壌浄化ビジネスに力を入れている考えを示している。

 

https://www.kajima.co.jp/news/press/202006/18c1-j.htm