HOME11.CSR |商船三井運航の大型貨物船のアフリカ・モーリシャスでの座礁。流出重油は1000㌧以上。「化石燃料は温暖化加速だけでなく、海洋汚染と生態系破壊の元凶」を浮き彫りに(RIEF) |

商船三井運航の大型貨物船のアフリカ・モーリシャスでの座礁。流出重油は1000㌧以上。「化石燃料は温暖化加速だけでなく、海洋汚染と生態系破壊の元凶」を浮き彫りに(RIEF)

2020-08-10 15:29:50

wakashio002キャプチャ

 

 インド洋の島国モーリシャスのラムサール条約登録地で座礁した商船三井運航の大型貨物船から1000㌧以上の重油が流出した問題で、環境NGO等は、「化石燃料のリスクは温暖化加速だけではない。海洋を汚染し、生態系を破壊し、地域住民の生活を脅かす存在だ」と指摘している。モーリシャスは「環境非常事態宣言」を発し、流出した油の人手による回収作業に取り組んでいる。日本では商船三井等の賠償額に焦点が注がれるものの、生態系の回復への手立ては示せていない。

 

 (写真は、座礁した「わかしお」。油が周辺に流出している)

 

 商船三井等の発表によると、座礁したのは、ばら積み船の「わかしお」(10万1000㌧)。パナマ船籍で、所有企業は岡山県笠岡市の長鋪汽船傘下のOKIYO MARITIME COPR. 7月14日に中国を出港し、ブラジルに向かう途中だったという。

 

 座礁したのは、7月25日午後7時25分。モーリシャス南東部沖のサンゴ礁と白浜が連なるPointe d’Esny and Mahebourg(ポワントデスニー、マエブール)地区で、湿地保全の国際条約であるラムサール条約に登録されている自然保全地区だ。同海域は水深が浅く、海外での報道ではモーリシャスの湾岸警備隊が、わかしおに対して、航行の安全を警告していたという。

 

座礁した「わかしお」を心配そうに見つめる住民たち
座礁した「わかしお」を心配そうに見つめる住民たち

 

 本来ならば、島から沖合16 ~32kmを航行していたはず。だが、座礁した地点は沖合1.5km。航路を誤ったか、悪天候で島側に吹き寄せられたか。事故原因の調査でこの点も焦点になりそうだ。同船には積み荷はなかったが、燃料油として200㌧のディーゼル油と、3800㌧の重油が積み込まれており、このうち機関室右舷側の1180㌧の容量の重油タンクに亀裂が生じて、8月6日朝に流出したという。

 

 10万㌧級の船が沿岸近くで座礁した時点で、地域住民は船の大きさと、船から何かが流出するのでは、と不安に包まれた。座礁地点の周辺は世界的にも有名な野鳥の保護区等がある。座礁から重油の流出までに16日間もかかっている。この間、船側では油の抜き取り作業を続けていたというが、回収できたのは約50㌧だけだったという。

 

手作業で流出した油を回収する
手作業で流出した油を回収する

 

 大半の重油が流出し、その一部は海岸にも流れ着いている。モーリシャス当局は、深さ数メートルあるロープ状の仕切りを海中に張り、重油が野鳥の保護区に影響しないようにしているという。重油の回収・処理については、化学物質を使った処理剤の投与は、貴重なサンゴ礁や魚類にダメージを与えるため、主に手作業によって油を回収しているという。

 

 環境NGOのグリーンピース・アフリカの気候・エネルギーキャンペーン担当のHappy Khambule氏は「化石燃料の採掘から輸送、貯蔵、燃焼等のすべてのプロセスにおいて安全を完全に確保する方法はない。今回の重油流出は偶然ではない。われわれの社会が化石燃料に依存し過ぎているということの選択の結果だ。石油のリスクという点では、気候変動危機を悪化させるとともに、海洋と生態系を汚染し、貴重な干潟に生息している生き物たちや、地域住民の生活を危うくしている」と指摘している。

 

 モーリシャス政府は「環境非常事態」を宣言してフランスや国連に支援を求め、住民やボランティアも沿岸に流れ着いた重油の除去作業を始めている。日本の外務省も6人の国際緊急援助隊・専門家チームを派遣する。10日に日本を出発し、流出した重油の除去作業を支援するという。

https://www.greenpeace.org/africa/en/press/11864/greenpeace-africa-response-to-mauritius-oil-spill/

https://www.mol.co.jp/pr/2020/20046.html

https://www.nagashiki-shipping.jp/2020/08/08/%e3%81%8a%e7%9f%a5%e3%82%89%e3%81%9b/