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国連生物多様性条約の「愛知目標」、各国に求めた20項目のターゲット、今年末の期限までに「いずれも完全には達成できず」。CBO事務局が最新報告(RIEF)

2020-09-16 12:56:51

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 国連の生物多様性条約(CBD :カナダ・モントリオール)事務局は15日、生物多様性保全のために2020年までに各国が取り組む20項目のターゲットを掲げた「愛知目標」が、今年末の期限までに「いずれも完全には達成できない」とする報告書を公表した。来年、中国で開く国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で新たな世界目標を決める予定だが、目標を決めても実行が伴わない各国体制の変革が問われる。

 

  CBDの事務局長のエリザベス・ムレマ氏は「人類は今、将来世代に託すべき遺産をどうするのかという、岐路に立っている。自然は劣化している。今年、新型コロナウイルス感染が起きたように、それらを転換・再生させることもできるはずだ。われわれの決意と行動で、人類を含むすべての生物にとっての結果が変わる」との談話を出した。

 

CBO事務局長
CBD事務局長のムレマ氏

 

 公表された報告書は「地球規模生物多様性概況第5版(5th Edition of the Global Biodiversity Outlook:GBO-5)」。各国に生物多様性の保全対策を促す目的で同条約事務局が約5年ごとに公表している。今回は6年ぶりで、愛知目標の達成状況を約170カ国の国別報告などに基づき分析した。

 

 愛知目標は2010年に名古屋市で開いた第10回締約国会議(COP10)で採択された。2050年に自然と共生する世界を実現するため、2020年までに達成すべき20項目を掲げている。

 

 報告書によると、20の個別目標のうち14項目が「達成されなかった」。また「水産資源の持続的な漁獲」を目指す目標は「海洋資源の3分の1が乱獲されており、10年前より悪化している」。「絶滅危惧種の絶滅・減少を防止する」との目標も「推定100万種が絶滅の危機にある。野生動物の個体数は1970年以降で3分の2以上減少、10年以降も減少が続く」とした。ただ「保全活動がなければ、鳥類や哺乳類の絶滅数は少なくとも2~4倍になっていた」として、目標達成を目指す取り組みの意義も強調した。

 

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 20項目のうち残る6項目は「部分的に達成された」と評価した。しかし、「自然保護区を陸域の17%、海域の10%に広げる」目標は、数値こそ達成される見込みだが、保護区内の生物保護や効果的な管理という点では「不十分」とした。全体的に目標が未達成が多かった理由については「各国が設定する目標の範囲や水準が、愛知目標の達成に必要な内容に見合っていなかったため」と分析している。

 

 こうした「実態」を受けて、報告書は、これまでの「現状維持=BAU(Business as usual)」の状況からの変革が必要として、人類の活動によって影響を受けている生物多様性の回復のため、8つの分野での移行(Transitions)活動を求めている。

 

 それらは、①土地と森林の保全②持続可能な農業③持続可能な食料システム④持続可能な漁業と海洋⑤都市とインフラ⑥持続可能な飲料水⑦持続可能な気候行動⑧人と自然の健康を包摂した生物多様性の保全ーーである。

 

 報告書は、2050年のビジョンとして掲げる「自然との共生」を実現するには「人間の幅広い活動を従来のものから大きく転換する必要がある」と指摘。生物多様性の保全と気候変動対策とを「2大グローバルチャレンジ」と位置付け、気候変動が生物多様性保全の努力を低下させるとともに、自然の保全自体が温暖化の最悪事態を防ぐ最も効果的な役割を果たすとし、両対策の連携を強調している。

 

 来年5月に、中国・昆明で開くCOP15では、2030年までの次の10年に向けた「ポスト愛知目標」の採択を議論することになる。同会議は気候変動のCOP26とともに、今年10月に開催される予定だったが、新型コロナウイルスの影響で来年に延期されているされている。

https://www.cbd.int/doc/press/2020/pr-2020-09-15-gbo5-en.pdf

https://www.cbd.int/doc/speech/2020/sp-2020-09-15-sbstta24-gbo5-en.pdf