HOME |世界の大規模自然災害、2000年代の20年間で死者123万人、損害額2兆9700億㌦(約313兆円)、気候災害はその前の20年間からほぼ倍増。国連防災機関(UNDRR)が報告(RIEF) |

世界の大規模自然災害、2000年代の20年間で死者123万人、損害額2兆9700億㌦(約313兆円)、気候災害はその前の20年間からほぼ倍増。国連防災機関(UNDRR)が報告(RIEF)

2020-10-13 22:19:16

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 国連防災機関(UNDRR)は、2000年からの20年間で、世界全体で大規模な自然災害が7348件発生し、死者数が123万人、損害額は2兆9700億㌦(約313兆円)に上ったとの報告書を発表した。特に洪水や台風などの気候災害は、その前の20年間(1980年~1999年)と比べ倍近くに増えた。温暖化の進行が自然災害を増大させていることを示している。

 報告書によると、2000年からの20年間の大規模自然災害は、2000年前に比べて、件数で74%増、死亡者数で3%増、避難等の影響を受けた人数で24%増、損害額で82%増だった。死者を除くと、いずれの分野でも増大していることがわかる。 死者数がそれほど変わらないのは、早期警戒体制や避難対策が浸透してきたことなどの影響と考えられる。

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 大規模自然災害のうち、気候変動による災害は、6681件。それ以前の20年に比べて、82%増と増大した。死者数は51万837人(49%減)、被災者数39億人(21%増)。死者数の減少は前述の傾向と同様、早期警戒体制や避難準備等によるとみられる。しかし、被害件数、被害地域の増大で、被災者数は増えている。

 報告書は、20年前と後との違いでもう一つ明確な点を指摘している。それは、自然災害による被害の増大と同時に、脆弱地域での、貧困、気候変動、大気汚染、人口増加、無秩序な都市増大化、生物多様性の損失等と相互関係が被害を高めている点だ。国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成を目指すならば、こうした不必要な相互依存関係を断つ政治的コミットメントが求められる、と指摘している。

国別の損害額ランキング
国別の大規模自然災害発生件数

 報告書は、今回の分析に基づいて5つの主要ポイントと勧告を示している。

 (1)世界の気温上昇がパリ協定の目標を上回る「3℃上昇」になると、世界中で高いインパクトを持つ自然災害の増大につながる。そうなると、現在、多くの国が実施している気候適応策や災害リスク削減策が、無力化する可能性がある。

 (2)降雨パターンの変化と降雨量の変化の増大は、世界の農業の70%と、工作不適地での農業を強いられている13億人の人々をリスクにさらす。

2000年前の20年間と、以後の20年間の災害発生被害の比較
2000年前の20年間と、以後の20年間の災害発生被害の比較

 (3)いくつかの国々で、個別の災害タイプに応じた特化型の対応を進めることは、災害リスク削減策として、集中的アプローチといえる。ただ、新型コロナウイルス感染拡大で示されたように、よりグローバルで、相互連携的なマルチハザードアプローチの必要性が求められている。

 (4)災害リスク・ガバナンスの強化が必要だ。そうしたガバナンス構築の主要要素は、システマティックな自然災害リスクの増大を考慮に入れた、明確なビジョン、能力、計画、ガイドライン、 セクターを超えた資金と調整力等である。

 (5)災害に強い社会を作るには、構造的あるいは非構造的手段の両方を通して、 災害リスク予防と削減のために官民投資を増大させることだ。

 報告は、10人以上の死者と100人以上の被災者を出した災害を所管する国連災害疫学研究センター(Centre for Research on the Epidemiology of Disasters:CRED)の緊急事態データベース(Emergency Events Database: EM-DAT)を活用した。

 https://reliefweb.int/report/world/human-cost-disasters-overview-last-20-years-2000-2019

https://reliefweb.int/sites/reliefweb.int/files/resources/Human%20Cost%20of%20Disasters%202000-2019%20Report%20-%20UN%20Office%20for%20Disaster%20Risk%20Reduction.pdf