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太陽光発電バブル、土地争奪戦の実態(東洋経済新報)

2012-07-26 08:17:10

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空き地が一転、金脈に──。7月1日に始まった太陽光発電など再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)によって、これまで見向きもされなかった地方の土地の争奪戦が過熱している。

 同制度では、電力会社が再生可能エネルギーで発電した電力を一定期間、一定価格で買い取る。中でも太陽光の買い取り価格は1キロワット当たり42円と、30円台後半とみられていた事前予想を上回る高値となったことで、これまで様子見だった企業が次々と発電事業への参入を表明。太陽光パネルを製造する大手電機メーカーだけでなく、ソフトバンクなど異業種も発電のための土地取得に乗り出している。

 実際、太陽光発電施工工事を手掛ける協和エクシオでも工事の引き合いが急増。「山梨県などでは競争率が高くなり、顧客が土地の入札に落選し、案件が白紙になることもある」(山下博・CE本部本部長)。企業と自治体で思惑にズレ

 土地争奪戦が熱を帯びる一方、好条件にもかかわらず、買い手が決まらないケースもある。

 たとえば和歌山県は日照時間が長く、県内には6・5ヘクタールに及ぶ工業団地「コスモパーク加太」や、20ヘクタールの旧南紀白浜空港の跡地など、太陽光発電に適した空き地が多数ある。

 買い取り価格が決まった4月以降を中心に、県の企業誘致を担当する課には80件以上の問い合わせが殺到。うち半数の企業は土地の見学にも訪れた。しかし、県側は「太陽光発電所はパネルを置くだけで雇用を生まない。工場や商業施設誘致で街を活性化させたい」(県企業立地課)と消極的。コスモパークの一部の土地では4月に発電用の貸し出しを始めたが、広大の土地のほとんどは空き地のままだ。

 また、県が土地を売却したいのに対して、企業側は買取制度の期限である20年の賃借契約を求めている。「ゼロが一つ足りないのでは、と思うほど安値を提示してくる」(同課)ことも大きな壁となっている。

 条件がマッチしないのは自治体の土地だけではない。発電用の土地を公募しているソフトバンクには、これまでに自治体だけで300件以上、一般の農家などからの土地提供の要望も合わせると膨大な数の応募が寄せられた。が、「農地は農業以外の目的への転用が禁じられているなど利用できないケースも多い」(藤井宏明・SBエネジー副社長)。

 

 国は今夏にも将来的な電源構成の基となる「基本エネルギー計画」を策定予定。2010年10%程度だった再生可能エネルギーの発電比率を30年までに25~35%に引き上げるとしており、FITはその原動力になるとみられている。

 経済産業省の試算では、12年度の再生可能エネルギーの発電能力は前年度から原発2基分に相当する250万キロワット増加する見通しだが、これでは電力会社による供給力の1%程度にすぎない。30年までに太陽光など再生可能エネルギーの発電量を政府が計画するとおりに増やすには、土地の有効活用など克服すべき課題も少なくない。

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