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海の健康度指標、日本は11位 米大学・研究機関等の合同調査(National Geographic)
2012-08-16 22:27:36
2012年ロンドン五輪のメダル獲得競争に続き、海洋保護を示す指標でもアメリカが中国に勝利した。新たに発表された「海洋健康度指標(Ocean Health Index)」では、世界の約170の海域を100点満点で評価。中国の53点に対し、アメリカは63点を獲得している。日本は世界11位の69点だった。
自然保護団体、学術機関、政府機関など幅広い分野の海洋科学者が参加し、人間が享受する恩恵の観点から海洋の健康状態を評価する採点システムを開発した。
まず調査チームが世界の沿岸国や地域の生態系、社会、経済、政治などの要素を評価。その後コンピューターモデルを用いてデータを処理し、スコアを算出した。
世界平均は60点で、最低は西アフリカ大西洋岸に位置するシエラレオネの36点、最高は南太平洋にあるアメリカ領の無人島、ジャービス島の86点だった。
「アメリカ西海岸、カナダ、オーストラリア、EUなどは、海洋の健康度改善に向けた取り組みを既に表明している。特にこれらの国や地域で、政策決定時の情報源として役立ってほしい」と、研究を率いたカリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)の海洋生物学者ベンジャミン・ハルパーン(Benjamin Halpern)氏は話す。
「状態が良いか悪いか、誰でも海に出てみればわかるだろう。ただし、客観的な指標となる基準が今までなかった。さまざまな要素が絡み合っているので、測定や定量化が難しい。海洋健康度指標によって、海の状態を総合的にとらえることができる」と同氏は説明する。
指標の開発には、UCSBの国立生態系分析・統合センター(NCEAS)、コンサベーション・インターナショナル(CI)、非営利団体COMPASS、ニューイングランド水族館、米国海洋大気庁(NOAA)、複数の大学が参加した。ナショナル ジオグラフィック協会も資金援助している。
◆海洋の恩恵
「海洋健康度指標の評価対象は、自然のままの海洋の状態ではなく、沿岸国・地域が受けるメリットの観点から選ばれた」とハルパーン氏は強調する。
具体的な調査範囲は沿岸から200海里の排他的経済水域(EZZ)で、「きれいな水」、「食料供給」、「炭素の貯蔵量」、「生物多様性」、「沿岸域の保護」、「観光とレクリエーション」、大型漁船を使わない「零細漁業」、「地元経済の支援体制」、「海洋の個性」など10項目が評価された。
ドイツ沿岸では産業化が進んでいるが、比較的高い73点を獲得した。保護対策が手厚く、市民の評価も高いことが大きなポイントとなった。
一方、86点を獲得したジャービス島は無人島で、非常に良好な健康状態が最高点につながった。
ただしハルパーン氏は、「指標の目的は一方的な聖域化ではなく、持続可能な活用方法の模索だ」と注意を促している。
研究の詳細は「Nature」誌オンライン版に8月15日付けで掲載されている。
Photograph courtesy Sterling Zumbrunn, Conservation International
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article_enlarge.php?file_id=20120816001