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アメリカを襲う異常気象、その原因は?(National Geographic)

2012-08-21 23:42:53

アリゾナ州、フェニックスを襲う砂嵐「ハブーブ(haboob)」(資料写真)。アラビア語で“暴風”を意味する。
アリゾナ州、フェニックスを襲う砂嵐「ハブーブ(haboob)」(資料写真)。アラビア語で“暴風”を意味する。


今年のアメリカ各地を襲っている異常気象の原因は何だろうか?専門家は「不運」と「地球温暖化」を指摘している。75年間以上も破られなかった記録を更新した今年は、異例ずくめの夏に違いない。7月、強力な熱波がアメリカを襲い、同月の平均気温を観測史上最高値にまで押し上げた。

1895年に始まった国レベルでの観測で、最高を記録したのは1936年。米国海洋大気庁(NOAA)によると、2012年7月の平均気温は20世紀を約1.8度上回り、過去最高を更新したという。

 7月25日には、ミズーリ州のカンザスシティで摂氏42度を記録。激しい熱波は、人間だけでなく野生生物や農作物にも深刻な影響を与えている。

 中西部の河川はこの数週間で水温が大きく上昇し水位も低下、チョウザメをはじめとする数万もの魚が死んでいる。最近ようやく中西部全域で雨が降ったが、干ばつによるトウモロコシや大豆などの作物被害は甚大である。米国農務省は生産量が数年間の最低になると予測している。

◆温暖化が異常気象を加速

 一連の災害の引き金を引いたのはさまざまな気象現象だ。例えば、2010、2011年と連続して発生したラニーニャ現象(ペルー沖の海面水温が低い状態が続く現象)で、北米の干ばつ多発地帯で嵐が減少。「熱の尾根(Heat ridge)」として知られる巨大な高気圧帯も、今夏のアメリカの上空に停滞している。

「しかし、懸念すべき点はこれだけではない」と、1年間に及ぶ史上最悪の干ばつを経験したテキサス州の気候学者ジョン・ニールセン・ギャモン(John Nielsen-Gammon)氏は語る。「災害の原因を“不運”だけでは片付けられない。人為的に引き起こされた地球温暖化も一因だ」。

 1970年以降、主に大気中の温室効果ガス増加により、地球の平均気温は0.5度上昇しているという。気温が上がれば、厳しい熱波や干ばつなどの異常気象が発生する可能性も高まる。

「雨がほとんど降らなかった2011年のテキサス州は、仮に気候変動がなかったとしても、記録的な猛暑に見舞われていたと思う」とニールセン・ギャモン氏は話す。「しかし、気候変動が事態のさらなる深刻化を招いたのは確かだろう」。

◆豪雨の発生する可能性が増加

 異常気象は他にもある。地球上の海水が温かくなるにつれて、大気中に蒸発する量が増えており、最新のデータによると1970年以降で約4%増加したという。空気中の水分が増えれば、7月下旬に中国、北京を襲ったような豪雨の可能性が高くなる。当局は過去60年で最も深刻な豪雨と発表している。

「コンロに点火すれば、鍋の中の水はどんどん蒸発する」と、バージニア州アーリントンのシンクタンク「気候エネルギー・ソリューション・センター(C2ES)」の上級科学者ジェイ・グレッジ(Jay Gulledge)氏は説明する。「水蒸気が増えれば増えるほど、降る雨は激しくなる」。

 ある特定の日が晴れるか雨になるかは運次第だ。しかし、気温上昇と大気中の水分増加という2つの要因は、今後の異常気象の発生確率を高めるだろう。

「気象研究者としては、温室効果ガスの増加に感謝すべきかもしれない」とコロラド州ボルダーにある国立大気研究センター(NCAR)の上級科学者ジェラルド・ミール(Gerald Meehl)氏は述べる。「二酸化炭素が少しでも増えれば、気温は上昇し、異常気象の確率も高くなる。かつては珍しかった現象も今後は頻発することになるだろう」。

http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20120821002&expand#title