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大陽日酸、独社とのガス合弁解散 太陽電池用、競争激化で 社長が引責、後任に田辺氏 (各紙)

2012-09-29 10:38:02

次期社長に内定し記者会見する田辺専務(右)と会長に復帰する田口相談役(28日、東京都品川区)
各紙の報道によると、大陽日酸は28日、太陽電池の製造などに使う特殊ガスについて、独化学大手との合弁会社を解散するなど、共同事業から撤退すると発表した。今回の事業撤退で233億円の特別損失を2012年4~9月期に計上、川口恭史社長(60)は業績悪化の責任を取って辞任する。太陽電池は国内では再生可能エネルギーの全量買い取り制度導入で伸びているが、中国勢の台頭などで競争が激しく、部材企業の撤退や縮小が広がり始めた。

次期社長に内定し記者会見する田辺専務(右)と会長に復帰する田口相談役(28日、東京都品川区)




大陽日酸が撤退するガスは「モノシランガス」と呼ばれ、液晶パネルや半導体の製造工程でも使う。共同事業では、独エボニックデグサが三重県に工場を建設。大陽日酸は10年間、決まった量を固定価格で引き取る契約を結んでいた。


 しかし、08年秋のリーマン・ショック後に需要が冷え込み価格が下落した。現在の販売価格は計画の半額に及ばない。




 今回の特殊ガスは太陽電池のなかでも、シリコンの使用量が少なくて済む薄膜シリコン太陽電池向けが主な用途。だが、シリコン価格の低下によって、発電効率の劣る薄膜型の競争力が低下する結果となった。




 エボニックデグサは今秋中に生産を終え、工場を閉鎖。精製事業の合弁会社も解散する。




 欧州で買い取り制度の見直しが進むなか、中国企業の供給拡大などで世界の太陽電池市場では価格競争が激化。大手の独Qセルズが今春に経営破綻し、国内大手のシャープも米太陽光発電会社の売却を検討するなど、事業の大幅縮小を検討している。世界シェアの高い中国企業すら利益の確保が厳しい。




 川口社長は10月1日付で引責辞任し、田辺信司専務(62)が昇格。田口博取締役相談役(76)は代表権のある会長に復帰する。新体制で同日から1年間、田辺社長らの役員報酬を10~20%削減する。

田辺 信司氏(たなべ・しんじ)72年(昭47年)日大理工卒、日本酸素(現大陽日酸)入社、06年大陽日酸常務執行役員、10年専務。東京都出身。(川口社長は取締役副会長に就任)