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横浜市社協、4億円を未返済 市からの無利子貸付 (東京新聞)公的支援頼みボランティアの曲がり角

2012-10-09 14:16:21

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横浜市が一九九三年度から十一年間にわたり、外郭団体の「横浜市社会福祉協議会」に無利子で貸し付けた計四億三千万円のうち、四億円が返済されていないことが分かった。基金の運用益で助成事業を行っている社協は、低金利で減った事業費の補填(ほてん)に充てていた。契約には「市場金利が5%を超えたときに返済する」とあるだけで、返済期日の定めはない。金利が上向く兆しはなく、事実上の無期限貸し付けになっている。 (中沢誠)

 横浜市では今年、社協をはじめ外郭団体が資産運用のため、リスクの高い金融商品「仕組み債」を大量に保有していたことが判明。外郭団体の在り方を見直す機運が高まっており、市と社協は返済に向けて協議を始めた。

 総務省公営企業課は「外郭団体への貸し付けについて法的な定めはないが、場当たり的な赤字補填なら国の指針に照らして問題だ」としている。

 この貸し付けは、基金の運用益で事業をする外郭団体が対象。一九九一年のバブル崩壊で金利が下がったため、運用益に頼る公的事業への緊急の救済措置として九三年度に導入された。

 金利が回復しないまま、市は十年以上貸し付けを続けてきた。すでに新規貸し付けはしていないが、四団体で未返済額は計五億七千八百万円に上る。そのうち社協が最も多い四億円を占めている。

 社協は、国や市の出資金や市民からの寄付を基金に積み立て、大部分は国債や市債などの購入で運用。その運用益で福祉活動をするボランティア団体を助成している。

 市の貸し付けはピーク時で年八千三百万円に達したが、返済が見込めないため、二〇〇三年度の二百万円を最後に打ち切った。翌年度からは、補助金として毎年四千万円を交付している。

 市外郭団体指導・調整課の工藤哲史課長は「市も先を見誤ったのかもしれないが、社会情勢が変わり外郭団体への支援を見直すときに来ている」と話す。

◆傾きかけた事業、市は回収打診

 傾きかけた横浜市社会福祉協議会の事業に、支援を続ける横浜市。自治体と外郭団体の関係に厳しい目が注がれる中、市は支援見直しへ重い腰を上げた。ただ、社協が地域福祉に貢献してきたのも事実だ。健全財政か福祉サービス維持か、簡単に割り切れない問題をはらんでいる。

 社協によると、昨年度、ボランティア団体に助成した総額は約九千八百万円。基金の運用益約四千四百万円と寄付金約一千万円に加え、市の補助金四千万円が原資になっている。かつて運用益で賄えた事業も、市の支援なしでは成り立たない。

 基金に手を付けず、運用益で事業を行う手法は「果実運用型」と呼ばれる。高金利に沸いたバブル期に、国や自治体、外郭団体が導入した。バブル後は低金利で「果実」が実らず、基金を取り崩すケースが目立つ。

 横浜市でも二〇〇一年、市議会で社協への貸し付けに見直しを求める意見も出ていた。しかし、その後も社協への支援は続いた。

 社協は事業維持のため、リスクの高い「仕組み債」に手を出し、傷口を広げた。助成事業の基金約三十一億円のうち、仕組み債の運用は約九億円を占める。円高で運用益はわずか。途中解約すれば元本割れの恐れもある。

 市は本年度、厳しい財政状況を受け、市営プール一部廃止や障害者の福祉パスの有料化を検討するなど市民サービスの見直しにまで切り込んだ。今回の社協への返済打診は、「市が身を削っているときに社協だけが聖域でいいのか」という市の姿勢の表れだ。

 社協は年内の理事会で、基金の取り崩しを含めて対応を決める。

 返済にあたり社協が懸念しているのが、地域福祉への影響だ。社協の事業で地域の福祉ボランティアの裾野は広がり、助成団体は千八百団体を超えた。社協の稲葉幸保・総務部長は「基金を取り崩して返済すれば、運用益はさらに落ち込む。場合によっては事業を縮小せざるを得ない」と打ち明ける。

 深川敦子・市福祉保健課長は「ボランティアの意欲をそがないよう、財政とのバランスを考えながら支援の在り方を見直したい」と話している。

 

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012100990124142.html