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日本原子力学会が東電福島原発を使用済み核燃料等の「廃棄物墓場」に転用を検討(Bloomberg)

2011-05-29 01:34:04

Bloombergの報道によると、日本原子力学会は、東京電力福島第一原子力発電所の1号機を廃炉後に、同地を使用済核燃料等の「graveyard(墓場)」に転用する可能性を議論しているという。東京大学公共政策大学院特任教授の諸葛宗男教授がBllombergのインタビューで明らかにしたもので、同教授は「核廃棄物貯蔵所にするには数兆円が必要」と述べている。

日本原子力学会は、原子力関係の研究者と実務家らで構成する学会で、会員数は7000人以上。原子力エネルギー政策に関して政府にも勧告をしている。

 諸葛教授は、事故後に設置された学会内のクリーンアップ・パネルに所属する50人のメンバーの一人である。同パネルには、東京電力と経済産業省などのオブザーバーも含まれている。同教授は、「我々は福島原発の廃棄物処理について集中的に議論を展開している。使用済核燃料の貯蔵施設に転用することは、議論の中での一つのオプションだ」と述べた 。

 東電福島第一の場合、1986年のチェルノブイリ原発事故のような原子炉爆発はなかったが,3基の原子炉がメルトダウンし放射能が漏れている。このためチェルノブイリ原発事故と状況が似ており、同じ規模の危険度であると、ランク付けされている。3月11日の地震と津波による事故後、原発から周辺20kmの避難地域からは、5万世帯が退避し、家畜は処分され、作物の収穫も見送られている。

 一方、事故から25年を経たチェルノブイリでは、「現在も事故原発から周辺30 kmまでの地域はデッドゾーンになっている」。4月26日に東京で開いたチェルノブイリ事故後25周年記念の集会で、ウクライナの駐日大使のMykola Kulinich氏が明らかにしている。

福島県は東京から北に220㎞の位置にある。福島県庁の災害タスクフォースの担当者であるヒサシ・カタヨセ氏は、原子力学会が廃棄物処理場への転用を検討していることについて、福島県はそうした検討が行われていることは知らない、と答え、それ以上のコメントを拒否した。

諸葛教授は、福島に使用済核燃料等の放射性廃棄物保管施設を建設するには、少なくとも10年はかかるとみている。東電が、爆発を防止するための水素除去を行いながら汚染除去作業を進める作業の完了に5年はかかるとみている。

日本には現在、3か所に高度放射性廃棄物の貯蔵施設がある。そのうち2か所は、本州の最北端にある青森県の六ヶ所と関根浜にある。3つ目は、茨城県の東海村にある。これらのサイトは中間処理段階のもので、日本政府は、それらの廃棄物を地下深くに貯蔵保管する最終保管場所を捜している。  World Nuclear Associationによると、最終保管場所の選択は、2025 年までをめどとし、2035年から稼働する予定だという。

 世界にある原発から出る約27万トンの使用済み核燃料の約90%は、原発内部に保管されている。そのほとんどが深さ7mのプールに保管されている。今回の福島事故で起きた水素爆発で、原子炉建屋の屋根が吹き飛んだのと、同じような状況で保管されているのだ。

「福島原発を今後どうするかについては、どんな結論に達するにせよ、徹底した議論が必要」と、日本原子力学会社会環境部会委員の伊藤哲夫近畿大学教授は指摘する。「これは、政府が責任をもって最終的に決定しなければならない事柄である」と。

この2週間の間に東電は、原子炉の1 、2 、3号機すべての燃料棒がほぼ完全なメルトダウンをしているようだと認めた。このことは、米国が事故の初期段階において、東電の評価よりも事態はもっと深刻だと評価していた内容と、一致する。

Bloombergの記事:http://financegreenwatch.org/?p=1269