HOME5. 政策関連 |アスベスト(石綿)台帳 東京都内23区中 8区が「整備せず」  震災時に飛散の恐れ(東京) 低い自治体の管理意識 |

アスベスト(石綿)台帳 東京都内23区中 8区が「整備せず」  震災時に飛散の恐れ(東京) 低い自治体の管理意識

2013-04-01 10:48:06

Asbestos2013040199070517
Asbestos2013040199070517大地震などで建物が崩れると飛び散る恐れがあるアスベスト(石綿)。どの建物に使われているかを把握する第一歩になるのが「アスベスト台帳」だ。国は自治体に台帳の整備を促すが、ビルが林立する東京二十三区の状況を本紙が調べると、前向きな区がある一方で「着手予定なし」の区が三分の一を占めた。阪神大震災で、がれき処理の作業員を死に至らしめた危険物質にどう向き合うのか、自治体の意識の差が浮き彫りになった。 (中山高志)

アスベスト台帳は、民間建築物の建築時期、構造、面積、用途のほか、現在の所有者名や住所などを電子化して入力(データベース化)するもの。アスベストが天井や壁などに吹き付けられていないか、劣化して飛散しやすい状態になっていないか、自治体が調査するための基礎資料となる。

対象は、アスベストが使われた一九五六~二〇〇六年に施工された建物のうち、木造や一戸建て住宅を除く全国の約二百八十万棟。国は今後、アスベストの含有調査を本格化させる構えで、調査手法を組み立てる。

二十三区で唯一、台帳の整備を終えたのは豊島区。対象建物の登記簿情報と、民間の建築計画を審査した際に記録した「建築確認台帳」をそれぞれコンピューター入力して照合。約一万九千棟分を一一年度中にまとめた。千代田、港、世田谷、目黒の各区も同様に整備を進めている。

このうち、目黒区の担当者は「平常時のアスベスト被害を防ぐことはもちろん、大地震発生時にもアスベスト建物を把握して区民に情報提供する必要があり、台帳整備は欠かせない」と話す。

一方で、整備に取り組む予定がないのは八区。理由は「人員が配置できない」(渋谷区など)「経費面に課題がある」(墨田区など)が多い。新宿、杉並両区は「建築確認台帳の電子化を優先している」と回答したが、所有者が建築当時から代わった場合、登記簿などの情報がなければ把握は難しい。

国は〇八年度から、台帳作成の費用を全額負担する補助制度で整備を促すが、普及は遅れている。国土交通省の担当者は「建物を増改築する時、吹き付けアスベストを使っていれば除去するか、飛散防止をする必要があるが、現在の所有者が分からないと指導もできない。アスベスト調査の本格化に向けて、台帳整備を進めてほしい」と話している。

<アスベスト被害> 繊維状の鉱物で、不燃性や保湿性が高く断熱材などとして建物に幅広く使われた。髪の毛の数千分の一と小さく飛散しやすい。吸い込むと潜伏期間を経て悪性腫瘍の中皮腫や肺がんなどになるリスクを負う。2005年に兵庫県尼崎市で「クボタ」旧工場の周辺住民が中皮腫を発症していたことが発覚し社会問題化。08年以降、阪神大震災でがれき処理に携わった人が中皮腫に侵されたとして4人が労災認定を受け、少なくとも2人が死亡した。中皮腫の大半はアスベストが原因とされ、11年の国内の死者は1258人に上る。

 

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013040190070517.html