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環境取引所、中国で乱立、制度整備追いつかず、一部は「開店休業」 (各紙)

2011-07-05 18:48:24

中国各地で二酸化炭素(CO2)排出量の取引などを扱う環境取引所の開設が相次いでいる。中国は世界最大のCO2排出国。地方政府は開設で環境問題への対応をアピールするが、取引の前提となる法的裏付けが不十分なままの見切り発車も少なくない。20カ所以上が乱立、「開店休業」状態の取引所も出ている。
 東北部の吉林省長春市に4月、「吉林省環境エネルギー取引所」が設立された。同月には内陸部の四川省広元市にも同省初の環境取引所が登場した。
 環境取引所開設が本格化したのは北京五輪が開かれた2008年8月に北京と上海に開設されて以降。背景には「いずれ欧州のように大きなビジネスになる」(ある取引所幹部)との思惑がある。取り扱い項目は各取引所で異なるが、京都議定書のクリーン開発メカニズム(CDM)に基づく排出枠や、私的第三者機関が認証した排出量「VER」などが取引されている。
 上海環境エネルギー取引所では、開設から3月末までの累計取引金額が100億元(約1250億円)を突破した。昨年は製紙メーカーの国際済豊紙業集団が約2万2千トンのCO2排出枠を同取引所を介し購入。工場5カ所に割り当てた。北京環境取引所の累計取引件数はCDM58件、VER27件にのぼる。
 一方、10年6月設立の大連環境取引所では「実質的な取引は始まっていない」(同取引所)。電話しても「この電話番号は現在使われておりません」とのアナウンスが返ってくるだけの取引所もあるという。
 取引が増えない背景について「企業ごとに排出上限量(キャップ)を割り当てる仕組みがなく、排出枠を買う必要性がない」(日系商社)との指摘は多い。「中央・地方政府レベルで、取引管理制度の整備などが進んでいない」(取引所関係者)ことも影響している。
 取引拡大へ契機となりそうなのが、13年にも導入予定の環境税「炭素税」。世界資源研究所の鄒驥・中国区首席代表は「税率次第では、税金を払うより市場で排出枠を購入する動きが進む」と地元メディアに語った。「中国政府が北京、上海など直轄4市と湖北、広東の2省を排出量取引テスト拠点に指定した」(日系商社)ことにも期待がかかる。企業に取引を促す環境整備の進捗が注目される。