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宮城県 名取市閖上地区復興計画 現地再建混沌 「津波の危険のある現地には戻りたくない」住民増加 行政の復興計画とギャップ (河北新報)

2013-05-25 17:13:35

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yuriage20130525004jd東日本大震災で被災した宮城県名取市閖上地区の復興計画で、住民の合意形成が進まない。市が今春行った個別面談で、「閖上に戻りたい」という意向を示した住民は25.2%と、昨夏の面談時の34.1%を下回った。現地再建を目指す市の方針に反して内陸への移転を望む住民は多く、閖上の将来像は混沌(こんとん)としている。(岩沼支局・成田浩二)

 

「この数字でも計画は成り立つのか」「住民意識と計画とのギャップが大きいのではないか」
21日の市議会震災復興調査特別委員会。面談結果を示された市議からは、復興計画を疑問視する声が相次いだ。

 

 

<移転希望が6割>
個別面談では、閖上に戻る意向を示したのは459世帯にとどまった。一方、区域外への移転希望は、移転済み、仙台東部道路西側の災害公営住宅の入居希望者を合わせ1086世帯で、回答者の約6割に達した。
面談での意向を踏まえ、市が閖上に戻ると見込むのは約1700人。震災前の約5700人から3分の1以下に減ることになる。
閖上地区では津波で約750人が犠牲になった。復興事業区域は津波の浸水域と重なる。住民からは「津波の不安がない内陸に移転させてほしい」「柔軟な選択肢を示すべきだ」などの声が上がる。
市は計画を維持する姿勢だ。特別委で見直しの必要性をただす市議には「閖上のまちを分散させたくない」などと繰り返した。
復興計画では昨夏の個別面談を受け、計画人口を当初の5500人から3000人に下げ、かさ上げ面積も70ヘクタールから45ヘクタールに縮小した。これ以上の変更は避けたいのが本音。仙台東部道西側に計画する上限100戸の災害公営住宅以外、内陸に移転先を設けない方針だ。
現地再建する住民には支援金を最大100万円上積みする優遇策を導入した。今後もかさ上げや多重防御などの安全対策を訴え、少しでも事業区域内にとどまるよう理解を求めていくという。
佐々木一十郎市長は「表向き反対意見ばかり出るが、それ以上の方々が一日も早い事業推進を望んでいる」と強調する。国や県との調整を進めており、事業認可取得は可能との見方を示す。

 

<申請、来月以降に>
17日には復興庁で谷公一副大臣に事業推進へ協力を求めた。谷副大臣は基本的には地元の意向に沿う姿勢を見せた。ただ、熱心に閖上の魅力を説く佐々木市長に「憲法では住居の自由が保障されているからね」と、住民感情に配慮するよう、やんわりとくぎを刺した。
事業区域内で地権者による土地の売却希望が想定を上回ったこともあり、認可申請は当初予定の5月中から6月以降にずれ込むこととなった。認可を得ても、盛り土や区画整理などの膨大な作業が控える。事業完了は早くて2017年度以降と見込まれる。
閖上を離れる住民は時間がたつほど増える恐れがある。猶予がない中で、内陸移転を望む被災者と計画との隔たりをどう埋めるのか。市の力量が問われている。

 

<閖上の復興計画>

 

事業区域は約120ヘクタール。貞山堀東側と西側の一部計50ヘクタールを災害危険区域とし、集団移転事業を実施する。貞山堀西側70ヘクタールでは区画整理事業を行い、うち45ヘクタールを海抜5メートルまでかさ上げする。集団移転先はかさ上げ区域内に設け、閖上への人口集積を目指す。

 

<住民の個別面談>復興事業区域の地権者と震災時の居住者計2238世帯を対象に4~5月に行い、1823世帯が回答(回答率81.5%)。うち25.2%が閖上に戻る意向を示した。地区外への移転希望(移転済み含む)は46.1%、仙台東部道路西側に造る災害公営住宅入居希望は13.5%。

 

http://www.kahoku.co.jp/news/2013/05/20130525t13032.htm