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米軍性暴力、適切な処罰不可欠 ディック氏(映画監督)に聞く(琉球新報)

2013-05-28 18:58:00

カービー・ディック監督
カービー・ディック監督
カービー・ディック監督


日本維新の会の橋下徹共同代表の従軍慰安婦問題などに関する発言は米国内でも反発を招いた。一方で橋下氏に風俗業の「活用」を提案された米軍も性暴力事件が相次いで発覚し、国内世論の批判を浴びている。米軍内の性暴力問題を追ったドキュメンタリー映画のカービー・ディック監督(米ロサンゼルス在住)が、26日までに本紙の書面インタビューに応じ、橋下氏の発言を批判した上で、米軍の性的暴行根絶に向けては閉鎖的な体質を改善すべきだと指摘した。ディック監督の発言内容は次の通り。

 ―橋下氏が在沖米軍に「性的なエネルギーを合法的に解消できる」と風俗業者の利用を勧めた。
 「橋下氏は沖縄の市民の安全を心配して提案したつもりだとは思うが、彼は性的暴行の本質を理解していない。性的暴行は『性』ではなく、『暴力』の犯罪だからだ。性的暴行をする米軍人の多くは、駐留先の『禁欲的生活』に駆り立てられて犯行に及ぶのではない。以前に何度も性犯罪を続けてきた傾向がある」

 

 

 ―橋下氏は「海兵隊の猛者の性的エネルギーをコントロールできない」とも述べた。
 「『彼らには余りあるほど大量のエネルギーがあったため、自らを制御できなかった』と、米兵の性犯罪を弁明するようなものだ。われわれは自国の軍隊に高い水準を保つことを求めているし、当然そうでなくてはならない。性暴行に及ぶ兵士は弁解を与えられるのではなく、起訴され、刑を受けなくてはならない」

 
 ―一方で、その米軍内の性的暴行が社会問題となっている。原因は何か。
 「この問題はとても深刻だ。国防総省の推計によると、2012年に発生した米軍内の性犯罪は2万6千件に上る。しかし加害者が軍法会議で処罰された事例は全体の1%未満だ。最も重要な理由は、これらの犯罪を裁くかどうかを判断するのは被害者の上官だが、彼らは往々にして調査や訴追に消極的である点だ」

 
 「米軍内の性犯罪の多くは常習犯が起こしている。(先に挙げた理由で)加害者が適切に起訴されず、犯行が繰り返される構図につながっている。米軍はこの問題点を何十年も前から認識しているが、常習犯を処罰できないままでいる」
 ―解決策は。
 「性的暴行をなくすために米軍がすべき最も重要なことは、加害者を適切に調査、起訴、処罰することだ。それには軍法会議(軍隊固有の司法制度)を改革することが不可欠だ。犯行を調査、起訴する権限を軍の指揮官から取り上げ、専門の訓練を受けた裁判官や検察官の手に委ねるべきだ」

 
 (島袋良太本紙ワシントン特派員)
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 カービー・ディック氏 1952年生まれ。米アリゾナ州出身。米軍内の性的暴行問題を追った「インビジブル・ウォー」(2012年)でサンダンス映画祭長編ドキュメンタリー部門観客賞を受賞。同作品を見たパネッタ前国防長官が米軍性犯罪防止プログラムの改革を表明するなど、反響を呼んだ。監督作品にその他「アウトレイジ」(10年)、「ツイスト・オブ・フェイス」(04年)など。

 

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-207191-storytopic-1.html