HOME9.中国&アジア |シンガポール企業、水資源汚染に悩む中国市場に商機(Reuters) |

シンガポール企業、水資源汚染に悩む中国市場に商機(Reuters)

2013-06-04 15:16:53

6月3日、シンガポールの水処理企業が著名投資家を引き付けている。水資源の不足・汚染に悩む中国が今後10年間で関連事業に8500億ドルを投じる予定で、各企業の技術が生かされるとみられているためだ。写真はシンガポールの施設で5月撮影(2013年 ロイター/Edgar Su)
 

6月3日、シンガポールの水処理企業が著名投資家を引き付けている。水資源の不足・汚染に悩む中国が今後10年間で関連事業に8500億ドルを投じる予定で、各企業の技術が生かされるとみられているためだ。写真はシンガポールの施設で5月撮影(2013年 ロイター/Edgar Su)
6月3日、シンガポールの水処理企業が著名投資家を引き付けている。水資源の不足・汚染に悩む中国が今後10年間で関連事業に8500億ドルを投じる予定で、各企業の技術が生かされるとみられているためだ。写真はシンガポールの施設で5月撮影(2013年 ロイター/Edgar Su)


[シンガポール 3日 ロイター] – シンガポールの水処理企業が著名投資家を引き付けている。水資源の不足・汚染に悩む中国が今後10年間で関連事業に8500億ドルを投じる予定で、各企業の技術が生かされるとみられているためだ。

水資源に乏しいシンガポールにとって、水をめぐる安全保障は重要課題。そのため、同国は水関連技術の集積地となっており、隣国のマレーシアからの輸入依存度を下げるように努めている。

公的データによると、2006年以降、シンガポールの水関連分野の企業数は倍増の約100社に拡大、4億7000万シンガポールドル(3億7120万米ドル)が関連研究費に充てられた。同期間でみると、シンガポールに本拠を置く水関連企業は100件以上の国際プロジェクト、規模にして約90億シンガポールドルの事業に携わっている。

マレーシアとの水供給契約が切れる2061年までに水の自給自足を目指すシンガポールは、貯水池やリサイクルされた水「ニューウォーター」、脱塩技術をめぐり、試行錯誤を進めている。

著名投資家ジム・ロジャース氏は「シンガポールは水分野において世界の主要プレーヤーの1つとなり、水分野の『シリコンバレー』になるべきだ」と語る。

同氏はシンガポール最大の水事業上場会社ハイフラックス(HYFL.SI: 株価, 企業情報, レポート)株を保有している。

ハイフラックスは4月、中国プロジェクトをめぐり2件の合意に至った。同社は、特定の汚染・有害物質を取り除くために用いられる薄膜技術で知られる。

米プライベートエクイティ(PE)企業のコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)(KKR.N: 株価, 企業情報, レポート)は今年、ユナイテッド・エンバイロテック(UNIT.SI: 株価, 企業情報, レポート)に4000万ドルを出資。2011年には同社の転換社債1億1380万ドルに応募している。

水処理施設の設計・建設を手掛けるユナイテッド・エンバイロテックはシンガポールに本拠を置き、同国の株式市場に上場しているものの、事業の大半を中国で行っている。売上高の9割超を中国が占める。

同社は5月28日、2013年3月通期の純利益が前年同期比で約3倍増えたと発表した。広報担当者によると、同社株の購入に関心を示す複数の投資家と交渉中だという。

シンガポール経済開発庁のクリーンテクノロジー部門エグゼクティブ・ディレクター、Goh Chee Kiong氏は「シンガポールは過去数十年、水に関して大きな弱点を抱えていた。そのため、われわれは水を戦略的な資源・資産とみなしている」と述べた。

<高まる注目>

世界の人口が約70億人に達するなか、投資家が水需要に目をつけるのは人口要因だけでない。水は半導体や製薬、石油化学、農業といった産業に不可欠なためだ。

OCBCインベストメント・リサーチのアナリスト、キャリー・ウォン氏は「水処理企業はここしばらくは顧みられていなかったが、投資家は割安、もしくは潜在力に気づかれていない企業を物色している」と話す。

過去12カ月でみると、トムソン・ロイター・グローバル・ウォーターおよびその他公益株指数は約2割上昇した。

シンガポールでは、ユナイテッド・エンバイロテックの株価が同期間に170%強上昇したのをはじめ、SIICエンバイロメント・ホールディングス(SIIC.SI: 株価, 企業情報, レポート)、メムスター・テクノロジー(MEMS.SI: 株価, 企業情報, レポート)、HanKore Environment Tech Group(HETG.SI: 株価, 企業情報, レポート)が33─67%上げた。

ただ、ハイフラックスの株価は過去1年間でシンガポール市場の代表的な株価指数をアンダーパフォーム。

CIMBリサーチはリポートの中で、ハイフラックスのプロジェクト獲得率が上昇するため、株価は上向くと指摘。主なアジアのライバル企業と比べ、バリュエーションも適切な水準になっているように見えるとしている。

複合企業セムコープ・インダストリーズ(SCIL.SI: 株価, 企業情報, レポート)やオフショア石油リグ建設世界最大手のケッペル・コープ(KPLM.SI: 株価, 企業情報, レポート)も水関連事業を抱えている。

<中国企業が手ごわいライバルに>

多くの企業は水問題を抱える中国に視線を向けている。

中国の環境保護省によると、2011年に検査した地点のうち、43%が人が触れることさえ問題がある水を含んでいた。

ユナイテッド・エンバイロテックは、中国政府による水排出規制の強化や、中国各地の水不足により、水処理サービスに対する需要が高まるとしている。

DBSビッカーズのアナリスト、Tan Ai Teng氏によると、中国光大国際(0257.HK: 株価, 企業情報, レポート)や北控水務集団(0371.HK: 株価, 企業情報, レポート)といった中国企業がシンガポール企業にとって手ごわい相手となりそうだ。両社はコスト競争力や中国におけるネットワークを持っているため、特にローエンドの水処理プロジェクトで厳しい戦いを強いられそうだ。

前出のジム・ロジャース氏は「中国は大きな水問題を抱えており、水をめぐって中国では大きなチャンスが生まれるだろう。中国は問題解決のために多額のお金を費やすことになる」と指摘している。

(Eveline Danubrata記者;翻訳 川上健一;編集 田中志保)

 

http://jp.reuters.com/article/companyNews/idJPTYE95207320130603?rpc=188