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伊藤忠、日揮出資のフィリピン・イサベラ州のバイオエタノール事業が引き起こす悪臭と大気汚染 現地報告(FOE)

2014-04-01 13:03:45

伊藤忠、日揮が出資して2012年に操業を開始したバイオエタノール工場
伊藤忠、日揮が出資して2012年に操業を開始したバイオエタノール工場
伊藤忠、日揮が出資して2012年に操業を開始したバイオエタノール工場


「普通の生活はなくなってしまいました。今では毎日、煤     (すす)を拭くことが日常になっています」 ――イサベラ州サン・マリアノ町マラボ村の住民
伊藤忠商事・日揮が出資するフィリピン・イサベラ州バイオエタノール事業では、原料となるサトウキビ栽培地11,000ヘクタール(東京ドーム2,353個分)の確保を巡り、2011年から「土地収奪」やサトウキビ畑で働く農業労働者の労働条件等の問題が指摘されてきました。

 

また2012年、バイオエタノール工場が操業を開始した後には、悪臭や排水等による公害問題も工場周辺の住民の頭を悩ませてきました。

 

バイオエタノール工場の立地するサン・マリアノ町マラボ村とその周辺の村では、現在もさまざまな公害に対する住民たちからの苦情が絶えません。2013年1月に続き、今年1月にマラボ村で開催された住民、地方自治体、現地企業間のダイアログでは、悪臭、排水等の面で現地企業から幾つかの施策が提示されました。しかし、この3月初めまでに実行に移された施策はほとんどなく、住民の懸念、および、問題の解消には至っていないのが現状です。

 

まず、悪臭は依然として大きな問題の一つです。工場の操業中は時間を問わず、風下の村で悪臭が漂う状況が続いています。事業者の説明によれば、臭気を100%取り除くのは無理であるものの、不快感を与えない程度に減らす対策をとることは可能とのことでした。しかし、現場では今日まで、企業側が可能と説明している悪臭の低減にも失敗しているのが実態です。喘息や腹痛などの症状の悪化、また夜中の悪臭による睡眠不足など、健康への慢性的な影響を懸念する住民の声も聞かれました。

 

工場の煙突から出ていると見られる煤(すす)も深刻な問題です。工場から1キロメートル離れた地点でも、屋外の水田、畑、樹木の葉っぱ・果樹、それから洗濯物や乗用車等、あらゆる物に黒い煤が付着しているのが確認され、被害がかなり広範囲に及んでいる可能性も懸念されました。フィリピンでは戸や窓を開放している家が多いため、煤は家の中にも入り込んでおり、住民は台所や寝室などの掃除を頻繁にしなくてはならなくなっています。また、工場近くの小学校でも、煤が教室内に降り込んでいるのが確認され、子どもへの影響を不安視する声が親たちの口から聞かれました。





























マラボ村に植えられているパパイヤ。実に煤が付着


マラボ村の水田。イネに煤が付着


マラボ村屋外に干された洗濯物


マラボ村屋外に干された洗濯物(煤が付着)


マラボ村屋内に入り込む煤


約1時間20分後、煤の量が増えている。


マラボ村庁舎の台所


ここにも煤が入り込んでいる。
工場から1km離れた屋外の葉っぱにも黒い煤 工場の煙突から排出される煙


工場近くの小学校


校庭の椅子の上に見られる煤

2012年の工場の操業以前には、こうした現象は見られなかったとのことから、このような影響について改めて調査し、早急な対策をとることが現地企業に求められています。

 
<以下は、2013年11月に報告したデルフィン・アルバノ町の「不当な農地利用」に関する続報です。>


 

●サトウキビの収穫後、事業者が農地から撤退するか注視が必要 伊藤忠のFoE Japanに対する回答状(2013年6月20日)で「解決された」との認識が示されていたデルフィン・アルバノ町の土地利用のケースについては、現地農民団体DAGAMI(イサベラ州農民組織)が現地企業の不当な対応を指摘してきました。

 

現地農民団体の現地企業に対するレター(和訳)はこちら

 

同ケースでは、長年耕作してきた農民らではなく、第三者と土地リース契約を結んだ現地企業が2011年にサトウキビの作付を開始。その第三者に土地所有権がないと確認された後、ECOFUEL社は被害を受けた農民らに補償金を支払ったものの、農民からのサトウキビ撤去の要請には応じておらず、根本的な問題解決には至っていませんでした。

 

2014年3月初めに同農地を農民らが訪れると、現地企業によるサトウキビの収穫が終わり、一面焼け野原が広がっていました。「以前、ここにあった水路を復活させて、コメやトウモロコシを植えよう。」――農民らは、農地が返却されることを前提に、早速相談し始めています。

 

しかし、現地企業が以前、第三者と結んだ土地リース契約が切れるのは2014年6月のため、現地企業が農地利用の権利を不当に主張し続け、新たなサトウキビの作付を開始する恐れも残っており、農民らにとっては予断を許さない状況が続いています。

 

日本企業は、以前から示している「土地所有権等の問題が確認できた場合は契約を締結しない。もしくは契約締結済みであっても終了するなどの対応を取る」という基本方針(2012年11月16日付、伊藤忠による回答書に則り、農民が長年利用してきた土地で、植えたい作物を自由に耕作できるよう、真摯な対応をとることが求められています。









水田の奥に 撤去されぬままのサトウキビ畑が 広がっていたが、3月初めにサトウキビの収穫 は終わっている(写真奥の黒く焼けた部分)。  今後、事業者が農民の「サトウキビ撤去。農地         返却」の要請に沿った対応をするか注視する必要がある。(デルフィン・アルバノ町ビラ・ペレダ村)


サトウキビの収穫が終わった農地で、以前植えていたコメやトウモロコシを植えようと計画中の農民

同事業の詳細については、こちらをご覧ください。

 

http://www.foejapan.org/aid/land/isabela/2014Mar.html