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ビルマ(ミャンマー)・ティラワ経済特別区での住民強制移転問題で 住民がJICAに異議申し立て (メコン・ウォッチ)

2014-06-04 12:27:44

JICAに意義申立書を提出するミャンマーの住民(ANNから)
JICAに意義申立書を提出するミャンマーの住民(ANNから)
JICAに意義申立書を提出するミャンマーの住民(ANNから)

東京発 – ビルマのヤンゴン近郊に位置するティラワ経済特別区(SEZ)の住民 3名が、本日、 東京にて、国際協力機構(JICA)の審査役に異議申立書を提出しました。これは、2008 年のJICA 統合(円借款部門を担っていた旧JBICとの統合)以降、初の正式な異議申し立てとなります。審査役の一人、原科 幸彦 氏が直接住民らと会い、申立書を受け取りました。



今回の異議申立書では、同事業のフェーズ 1 において400 ヘクタール区域の住民が移転に伴い被った損害、また、残りの開発区域 2000ヘクタール内の住民が被る恐れのある損害について提示しています。これらの損害には、農地の喪失や農地へのアクセスの喪失、生計手 段の喪失、貧困化、住民の子どもたちの教育機会の喪失、ミャインターヤー移転地における標準以下の居住空間や基礎インフラ、清潔な水へのアクセスの喪失などが含まれます。



「ミャインターヤー移転地に建設された家屋はとても狭く、質の悪いものでした。そのため私は、家屋の替わりに補償金を受け取り、自分で建てることにしたのです。その方が、家族 のために、もっと良い家を建てられるからです。しかし今、私は借金を抱えています。そして家の建設に時間が長くかかってしまったため、働いていた工場との契約を打ち切られてしまいました。私にとって、ここでの新しい生活は非常に困難です。」と、異議申立て人の一 人、カインウィン氏は語りました。



「政府当局は、私たち住民の声には耳を傾けてくれません。ティラワの実状がどういうものか、私たちはJICA に伝えるため、国際基準やJICA 環境社会配慮ガイドライン(以下、ガ イドライン)で要件とされている適切な移転・補償措置を取るよう要望するレターを何度も提出しました。しかし、JICAも私たちの声を聴いてくれませんでした。ですから、私たちは今日、異議申立書を提出しました。ティラワの実態、また、事業がJICA ガイドラインを 遵守しているかどうか、審査役が調査することを期待します。」と、もう一人の異議申立人で、ティラワ社会開発グループのリーダーであるミャライン氏は語りました。



JICAへの異議申立書では、JICAガイドラインへの違反も詳述されています。その中には事 業の実施における説明責任を果たしていないことなどが含まれています。移転のプロセスでは、移転住民に対する再取得価格による補償が適切な時期に行われませんでした。収用され た土地に対しても一切補償はなされず、JICA はミャンマー政府の合法的に土地を収用したという主張を受け入れ、自らは調査を行ないませんでした。JICA は、移転住民の生活水準や収入機会、生産水準を改善、あるいは、少なくとも回復するという責任も果たしませんでした。また、JICA は、移転住民が住民移転計画の策定、実施、モニタリングに適切かつ意味ある参加ができるよう確保しませんでした。



「JICA は、過去 7 ヶ月間、地域住民が彼らの生活状況の悪化について指摘してきたにもかかわらず、真摯な対応をしてきませんでした。これは、明らかにJICA が自身のガイドライ ンの運用を適切に行なっていないことを示しています。今回、住民がこの正式な異議申し立てに踏み切ったのは、JICA が住民の懸念に対処してこなかったからです。今後、審査役が 調査を開始することになりますが、日本政府とJICAは、これ以上、影響住民の生活状況が悪化することのないよう、住民の訴えを真摯に受け止め、早急に適切な対処をとるべきです。 JICA が本件に対してどのように対処するかは、ビルマにおける JICA の他の支援事業の試金石となります。」とメコン・ウォッチ(開発事業による貧困化を回避するため、メコン流域 において日本が関与する事業のモニタリングをしている日本の NGO)は述べました。



JICA はティラワSEZ 開発事業に対し、出資額の10%にあたる約 5 億円(50 億チャット) を出資。日本企業 3 社、三菱商事、住友商事、丸紅が、39%を出資する。残りの10%をミ ャンマー政府が、41%を9 社のミャンマー企業の合弁が出資している。



連絡先: ティラワ社会開発グループ ミャライン(ミャンマー語)、 および メコン・ウォッチ 土川実鳴(日本語、英語) info@mekongwatch.org



http://mekongwatch.org/resource/documents/pr_20140602.html